近世の社会学 1 part 2
◎コントのサン=シモン批判(続き)
 しかし、サン=シモンはただ単に革命を非難するだけでは何も解決しないと考え、当時イギリスから始まっていた「産業革命」の経験より学び、「産業と科学の偉大な成果」に信頼を寄せ、産業者を中心に新しい自由・平等の新社会を建設しようと考えた。
 このサン=シモンの考えは多くの人々の関心を呼び寄せたのであるが、そのなかにアンファンタンやバザールといった過激な社会主義者も含まれていた。彼らは私有財産を廃棄する方向に進み、マルクス・エンゲルスによって「空想社会主義者」として数えられることとなったのである。
 コントは師サン=シモンの<産業重視>から学びながらも、彼のような実践的傾向に同調することは出来なかった。それゆえ、サン=シモンがなお政治的実践に未練を持っていることを批判し、今まずやらなければならないことは「純粋理論の科学的体系を仕上げること」であると助言し、「理論が未成熟なうちに実践的応用に焦ることは不吉な結果をもたらすのみである」と主張した。しかし、サン=シモンはこのコントの助言を受け入れず、ますます思想伝道の方に傾いていったため、両者の決裂は決定的となった。