2008年09月の記事


無意識の世界 Ⅱ part 12
 人ごみの中では攻撃的になる?!<都会の暴力と校内暴力>
 人間が引き起こす残酷な行為には、過密な環境が無意識のうちに影響していることも多いと考えられる。
 例えば、近年、いじめがエスカレートした挙句の殺人、いじめの被害者の自殺などといった事件がいくつも起こり、学校などでのいじめの増加や陰湿化、残酷化が社会問題となっているが、その背景として、都会の過密な環境を無視できない。
 過密状態が人の気持ちを荒げることは、J・カルホーンの動物実験でも確かめられている。
 彼は、縦三メートル、横四メートルの大きな箱を四つの部屋に区切って、ネズミの住居を作り、それぞれの部屋に巣箱とえさ箱を設けた。
 部屋と部屋との間は、一箇所を除いて橋でつながっており、ネズミが自由に行き来できるようになっている。
 人間の街にたとえれば、出入り口が二箇所ある二部屋は、交通の要所の大都会で、出入り口が一箇所の二部屋は、地方都市のようなものといっていいだろう。 
 この住居に、カルホーンは、32匹のネズミを入れて飼い、80匹にまで殖やした。住居の大きさは、48匹で最適と計算されたものなので、そこに80匹が棲むというのは、かなりの過密状態だ。
 各部屋に同じ数のネズミが棲みつけば、一部屋に20匹ずつという計算になるが、そうはならなかった。
 地方都市にあたる二部屋には、力の強いオスが何匹ものメスを従えて棲みつき、あぶれたネズミはどんどん残りの二部屋に集まった。ちょうど、大都会に人間が集まるのと同じ現象だ。
 この結果、大都会にあたる二部屋は超過密状態となったのだが、そうすると、そこに棲むネズミたちに、さまざまな異常行動が見られた。
 雌雄かまわず性行動を仕掛けるネズミがいたかと思うと、やたらに攻撃的なネズミがいたり、ほかのネズミとまったく関わらない孤立したネズミがあらわれたりした。割合普通の行動を示すネズミでも、時折攻撃的になったりした。
 特に深刻な影響が見られたのは、母親ネズミだった。
 妊娠したネズミは、流産してしまうことが多く、また、せっかく子ネズミが無事に生まれても、母親がちゃんと世話をしないので、大半が離乳前に死んでしまう。無事に成長できた子ネズミは、何と、正常な環境で育つ場合の10パーセントに過ぎなかった。
 ネズミの実験をそのまま人間に当てはめるわけにも行かないが、過密状態を不快に感じるのは、人もネズミも同じである。

 続きは次回です。 
 
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