生命誌の世界 Ⅳ part 11
 一方、共通性については、地球上の全生物はDNAを基本としているということが分かったのですから、今やどちらも来るところまで来たといってよいでしょう。ここで、それぞれの道を極めることも必要ですが、そろそろ両者をつなげられないか。ここでゲノムの登場です。
 多様な生物のゲノムはどうなっているか。最も簡単なデータとしてゲノムサイズを見ます。予想通り、簡単な生物であるバクテリアや菌類はゲノムサイズが小さく、複雑になるほど大きくなっています。それは、地球上にその生物が登場した順番になってもいます。生物の多様化は、共通の祖先からだんだんに新しい生物が生まれてきた、つまり”進化”と重なる、誰が見ても分かることです。
 ただ、ここで進化という言葉を使うと悩ましいことになります。ダーウィンの進化論が有名で、彼は自然選択が進化の要因だといったものですから、今でも多くの人が、これにこだわっています。そしてダーウィンは間違っている、私中村桂子の考えが正しいと述べて、新しい進化論を提出し論争しています。私中村桂子はここで進化という現象に関心を向けますが、論を提出するつもりはありません。ダーウィンの時代はキリスト教社会の中で進化という概念自体が説(theory)だったのです。19世紀初めに細胞説(cell theory)が出されましたが、今では生物がすべて細胞という単位からなることは認められていますので、”説”はとれました。進化も今では事実として認められています(もちろん、キリスト教原理主義はこれを認めませんが、ローマ法皇も1998年にダーウィンを認める白書を出しました)。つまり、進化も論でなく、実験・研究の結果を検討する学の時になっているのです。
 (D_D)/b