無花果
毎日数個が完熟する。学校から帰ると孫娘が冷蔵庫で冷やされたそれをうまそうに食べる。

我が家の鉢植えのイチジクなのである。三年前に真向いのコーポの住人が置いて行ってくれた。

彼は果樹園の会社勤務だったらしい。

何年になるだろう。向側の空き地に12軒ほどのアパートが建った。

近所と一騒動してようやく完成した。建築やが悪いのだが、私が三年間毎日、岡座へ通っていた頃である。

住人は町内会に誰も入らない。これも管理する建築屋の差し金。

私の前の道を挟んで並んで発ったのだが、戸を開けると、私の門の出入りの際、顔が合う。

ビシャット戸を閉めるのが半数以上。ぽっしり頭を下げるのが二人。

ところが門の真正面の右端の若夫婦はにこやかに「おはようございます」「こんにちは」と挨拶ができる。

偶然顔を合わすのだが、ある日、転勤で引っ越すことになったから、この鉢植えのイチジクを貰ってくれないかという。

お礼と選別の意味で、私の小作品を差し上げた。

忘れた頃、年賀状が届いて、千葉へこしたから、東京へ来たときに是非寄ってくださいと書いてあった。

奥さんは韓国人と後で知って、常識の持ち合わせの若者は外国人だったと知る。

私の小品は家宝ですといってくれた。日本の若者たちの情けない非常識を改めて知らされた。