ノーベル賞以上の数学者
 国際数学連合(IMU)は22日、数学の応用に関する最高の貢献者をたたえる「ガウス賞」の第1回受賞者に、伊藤清・京都大名誉教授(90)=確率論=を選んだ。同賞はIMUが02年に創設を決め、4年に1度贈る。伊藤氏の理論は金融工学を確立し、金融派生商品(デリバティブ)の理論を生み出す基礎となるなど、現代の金融理論に大きな影響を与えた。

 同日、スペイン・マドリードで開幕した国際数学者会議で授賞式があり、代理出席した三女の伊藤順子カリフォルニア大教授がメダルと賞金1万ユーロ(約150万円)を受け取った。

 伊藤氏は1942年、数学同人誌「全国紙上談話会」に確率微分方程式論を発表。偶然性を伴う運動や現象を記述、説明する確率解析理論の先駆けとなった。「伊藤の方程式」などと呼ばれ、生物学など多くの分野に応用。金融工学では97年、方程式を基礎に「ブラック・ショールズ方程式」を考案、証明した米国の経済学者、マイロン・ショールズ教授とロバート・マートン教授がノーベル経済学賞を受賞した。

 伊藤氏は「(米金融街)ウォール街で最も有名な日本人」と言われ、ウルフ賞、京都賞などを受賞した。伊藤氏は「大変光栄。私の想像を超えた領域まで確率解析を応用された方々とも、その名誉と喜びを分かち合いたい」とコメントした。

 IMUには、数学のノーベル賞と言われる「フィールズ賞」と理論計算機科学分野での優れた研究に贈る「ネバリンナ賞」があり、ガウス賞は三つ目の国際賞。従来の2賞は40歳以下が対象だが、ガウス賞は年齢制限がない。【奥野敦史】

毎日新聞 2006年8月22日 20時18分 (最終更新時間 8月22日 23時00分)