日中汗を沢山出すが
飲む水、否番茶を冷やしておいて、グラス一杯に氷を入れて、冷たくしないと飲まない。

ただ、冷やしただけでは生ぬるく感じて飲めないのである。

これを一日どれほど飲むだろうか。氷の使う量も可也である。そして、飲むたびに思い出すのは広島の売れっ子画家で私の東京での片腕のYさんを思い出すのである。

広島の支部展をするについて、広島県美術館を確保してくれと頼んだ。全てが準備完了のその年の展覧会に彼は出席できなくて、手術の後だった。

自宅へ見舞いに行った。ほんの小さい腫瘍だから、切ったらすぐに退院して、会に間に合うと言っていた。

行くと、やせ細った生気の無い彼の姿に涙した。元気付けて帰るとき、送って出た奥さんから手遅れの癌だったと知らされた。

展覧会が終わって、一月と立たないうちにまた、広島へ行かねばならなかった。彼の葬儀であった。

副会長と他の役員が行く準備をしていたが、他の者では駄目だ。俺が行くと、最後の別れに新幹線に乗った。

彼がアトリエを改造して、三階建ての最上階で絵を描いては、階下へ降りて、冷たい水をがぶがぶ飲んだのが原因ではないかという、すい臓癌であった。

場所が悪いから、発見が遅れたようだった。
今でも、彼が生きていたらと思うことがしばしばである。

有名団体の広島支部長だつたが、本部と折り合いが悪く、会を離れる相談を受けた。
そして、私の会へ来いと呼んだのであった。

その何年か後に、其れは実現した。

夢のあるロマンチックな絵が彼の特徴で、広島の大きい施設には何点も彼の絵が飾ってある。広島へ行くと、そこを尋ねては彼の絵と対面した。

頑固で一本気なところが大好きだった。氷水を飲むときは必ず思い出すのである。