プリムラ (サクラソウ科)
                         さくらそう

     サクラソウ

 サクラソウは、日本から中国東北部にかけて自生する宿根草である。サクラソウとは、「桜」によく似た花を咲かせる「草」という意味。かつて、埼玉県から東京にかけての荒川原野一帯には、江戸時代から昭和の初期にかけて、上流から流れついて繁殖したとみられるサクラソウの大群生地があって、江戸、東京の人々の行楽地として有名であったらしい。前の浦和市の西郊外にある田島ヶ原だけが「サクラソウの原野」として国の天然記念物に指定され、保護されている。かつてはその下流の浮間ヶ原や戸田ノ原が有名だった。が、関東大震災の復興のあおりで、この肥沃な泥土が壁土として掘り取られ、このときにサクラソウのほとんどが失われたという。

 サクラソウの栽培が始まったのは江戸時代に入ってからである。江戸市民の園芸熱の興隆に伴って自然的に発生し、人々は浮間ヶ原や戸田ノ原から変わり花を見つけては大切に育てたという。そして、やがて種子まきによる栽培が盛んになり、次第に観賞価値の高いものを選抜する方法で園芸草花としての発展を遂げるに至ったのである。

     プリムラ

 厳しい冬をじっと耐え、春の気配の到来を告げる清らかな花は、古くから多くの人々に親しまれ、愛されてきた。この仲間は主に北半球の温帯に約400種が分布し、前述のサクラソウも含まれるが、園芸上でプリムラと呼ばれるのは、明治の初めごろ日本に入ってきた、いわゆる洋種(西洋)サクラソウである。プリムラという属名の語源はラテン語の「初め(プリマ)」あるいは「最初の(プリムルス)」で、春一番に咲く花の意味だろう。

 日本で栽培される主なものは、次の七種である。うち1〜3が特に一般的に園芸店で販売されている。
 1.プリムラ・ポリアンタ
 2.プリムラ・マラコイデス
 3.プリムラ・オブコニカ
 4.プリムラ・キューエンシス
 5.プリムラ・シネンシス
 6.プリムラ・デンティクラータ
 7.プリムラ・アウリクラ

 ポリアンタは日本で育成された品種がジュリアンとも呼ばれ、プリムラの代表のように普及している。その鉢花のかわいさは、いたるところで目にすることができる。
 やや季節感が消失しつつあるポリアンタに対して、マラコイデスは品種改良が進んだ今日でも、早春を彩る草花として人気が高い。中国・雲南省の原産で、中国名を「報春花」といい、和名は株全体に白い粉があることから「化粧桜」とよんでいる。
 オブコニカは、プリムラ類には珍しく、室内の弱光に長く耐えて花期が長い。これに加えてボリューム感があることが人気の秘密だろう。しかし、株全体にある腺毛に毒素があり、体質によってはひどくかぶれるという難点がある。

 プリムラは水切れに弱く、特に開花期に水を切らすと咲いた花は傷み、あわてて水を与えてももとにはもどらない。なかでもマラコイデスとデンティクラータは、常時水が十分にある状態を好むので、大苗から水栽培に移すこともできる。自然光に当てることはどの品種にも大切だが、寒中に購入した鉢花の場合は、暖かい日を見計らって屋外で日光に当てる以外、ガラス越しの光でよい。冬も週に一回ほどのわりで液肥を施し、咲き終わった花殻をつむなどの手入れをしてやれば、長く楽しむことができる。

 

 幼き日の希望。恵まれない功績。悲しみをもつ。うれい。

 赤い花・・・青春の希望
 黄色い花・・・豊かである。
 白い花・・・可憐な、かわいい。
 紫の花・・・堅実である。