ヒナゲシ (ケシ科)
 園芸上、ヒナゲシが代表のケシ属の植物は、ヨーロッパ、アジア、アメリカなどに広く分布し、100種くらいある。属名のパパベルは、この種の植物をかむときに生じる音からつけられたものである。ヒナゲシとケシは、人類とのかかわりが深く、古くから栽培されてきた。ケシは麻薬のアヘンが採れるため一般の栽培は禁止されているが、昔は観賞用に栽培され、花も美しく改良されていたので、ボタンゲシの名があった。

 ケシとヒナゲシは中近東の原産であったが、古い時代に東西へ移っていった。移動したのは非常に古く、古代ギリシャでもエジプトでもケシを催眠その他に用いていた。ヒナゲシは小麦とともに広がり、小麦畑の雑草として今日に至っている。これらは唐の時代に中国に入ってきて、ヒナゲシは「虞美人草」とよばれた。垓下(がいか)の戦いで自決した項羽の愛姫、虞美人の血から、この赤い花が生まれたという伝説がある。

 ケシはヨーロッパの近代絵画に出てくる。それを見ると、八重咲きが現れたのは17世紀のこと。そのころ、東アジアでも八重咲き品種が現れている。日本へは中国から渡ってきて、桃山時代から江戸時代にかけて、しばしば絵に描かれた。ことに宗達が描いたケシの屏風絵は有名である。

 ヒナゲシの育種は、ケシよりはるかに遅れ、イギリスのウィルクスが1880年ごろに作出したのが最初で、これがいろいろと改良され、今日に至っている。その仲間でもっともポピュラーなのが、アイスランド・ポピーだ。北アメリカやユーラシアの亜北極原産で、カラフルで花が大きく、花壇のみならず切花にも用いられている。

 「芥子粒のように・・・・・」と、小さいことのたとえに用いられるが、ケシ類の種子は、ベゴニアその他の微小種子と比べて大きく、よく発芽する。露地に直播してもよいが、播種用土、ジフィーポットなどに蒔いて苗を育てると確実である。耐寒性は強く、9月蒔きにして秋または早春に定植する。



リシリヒナゲシ

 日本に自生する唯一のケシ属の種で、北海道の利尻島原産。ケシやヒナゲシとは異なり、葉は根出葉だけで茎につかない。北海道では山草愛好家によって栽培される宿根草である。

 花言葉・・・もろい恋。はかない恋。実らない恋。