星々の舟
 村山由佳作「星々の舟」を読んだ。彼女の小説は読み易い。たぶん、文体の波長が自分に合っているのだろうと思う。が、全体的に稚拙さを禁じえない。箇所箇所において、重箱の隅をつつくようなものではなく、小説というものの流れの中で、作家というものに徹しきれていないような―――(未熟ということかもしれない)。概して、最近の人気作家にそのことをよく感じるのではあるが。

 村山由佳は決して、句読点の短い、コミックのような小説書きではない。ぼくは彼女の感性が好きだから、よいほうへ成熟していって欲しいと願ってやまない。で、ぼくのことは、作家じゃないから、稚拙云々はおかまいなしということでご容赦を。
 
 一応あらすじとして、帯の言葉をそのまま記す。

 禁断の恋に悩む兄妹、他人の男ばかり好きになる末っ子、居場所を探す団塊世代の長兄、そして父は戦争の傷痕を抱いて-。愛とは、家族とはなにか。こころふるえる感動の物語。

 戦前生まれの厳格な父、家政婦から後妻に入った母。先妻の子供も後妻の連れ子も、分け隔てなく育てられた。そんな一家に突然、残酷な破綻が訪れて――。
 家族とはいったい何なのか。性別、世代、価値観もそれぞれに違う彼らは夜空の星のようにばらばらに瞬きながらも、「家」というひとつの舟に乗って、無限の海を渡っていく。

☆☆☆