頬杖をつきながら
 宴席にいた。別にしらけていたわけじゃないけれど、何度か頬杖をついていた。七〜八人の円形テーブルが十五ほどあった。百人以上の宴だったのだろう。

 社交がますます苦手になってゆく。まるで映画の一幕で、孤独な、もしくは場違いなところにいる男に、スポットライトが当てられているようだった。

 その男が宴の終わりの謝辞を述べた。述べさせられることになっていた。気分は空虚だったのだが、なぜか声を発しはじめると、次々と言葉が連続してきた。男は少々高揚していた。決して、酒の勢いを借りたわけじゃない。

 言葉を結ぶと拍手が起こった。お付き合いではないそれなりの拍手が。家路について、机の上でまた頬杖をついている。末席にいて、誰のテーブルをも訪ねなかった。まちがいなく冷めていた。何を話したのか、なぜあんたふうに熱を込めてしまったのかを考えている。

 頬杖はロダンのように熟慮をしているわけじゃない。なぜか、よく頭(こうべ)が重くなる。あごを支えていないと、思考が四散する。男の頬杖はあまりカッコがよいとはいえない。が、頬杖をついていないと考えがまとまらない、悪い癖がついてしまった。