夏の日
 誰でもひとつやふたつ、夏の日の記憶をかかえこんでいる。

 肌を焼くきつい日差し、海の匂い、森の匂い、洗いざらしのTシャツとジーンズ、草野球やキャンプ、突然の夕立、通り雨、そして、海辺の町での短い出会いと別れ・・・・・。

 夏休みがはじまる前には、誰でも楽しい予感でポケットをふくらませ、それが終わりに近づくころにはすり減ったスニーカーみたいにめいってくる。そんな忘れがたい、あまずっぱい記憶のかけらを、ぼくらは宝物のように引き出しにしまいこんでいる。