春の訪れ
 ペチュニアの種を蒔こうと、タキイとサカタのカタログを見ている。ここ数年大輪の色鮮やかな品種が人気だったが、今年は中、小輪のドレッシーなものを推奨している。それらは、大輪種よりもずっと多く分岐をし、多花性で、どうやらサフィニアを意識しているかのようだ。ほんとうに爽やかで美しい。

 一袋300円ほどで、およそ100ほどの苗が作れる。サフィニアの苗、一つ分のコストで。ぼくはミックスが嫌いだから、気に入りの色を選ぼうとする。そうこうして、各色、各品種の種を蒔くと、またパンジーやビオラのときのように数百の苗ができてしまう。

 ペチュニアはナス科の植物で、案外作りやすい草花だ。連作さえしなければ、土質もあまり選ばない。摂氏5度以上の気温で、日当たりがよければ、季節に関係なくいつでも咲く。いわゆる四季咲き。バランスがとれた肥料が好みだ。苦手なのが雨、長期栽培を望むなら、雨が当たらない場所がいい。

 三月になって雨の日が多くなった。寒さは相変わらずだけれど、太陽の光線は日増しに強くなってきた。スノードロップの花が終わり、ラッパ水仙が咲いてきた。木蓮の蕾が膨らみ、梅の花が散りはじめた。花壇ではパンジーとビオラが咲き乱れ、春の彼岸ごろには早や満開を迎えそうだ。

 冬野菜に董の立つ気配があり、収穫はやはり彼岸までだ。大根の白い花、キャベツやブロッコリー、白菜の黄色い菜の花、ミツバチや紋白蝶が飛びはじめ、そのころぼくは、ゴルファーでもなく、ギャンブラーでもなく、ナンパ氏でもなく、一介のガーデニングマンになっている。夏野菜、夏の草花の準備のために―。