生きる言葉
 風や雲のように、太陽や月のように、人は時の流れと関係なく生きていけない。世の中は心が痛むことが多く、日本人の多くが行き詰った閉塞感の中にいるような気がする。とりわけ高度成長期やバブル期を経験してきた人は、あのころの価値観から脱しきれていないのではないか。人生のパラダイムはとっくに崩れてしまっているというのに、まだまだ幻想の渦中にある。

 今考えると、あのころ多くの人が借金を当たり前だと思っていた。家のローン、自動車のローン、結婚式披露宴のローンなどなど。本当は日本人は金持ちじゃなかったし、そのつけが今頃になって露見してきた。父親が「お前たちを食わせてやっているんだ!」と居丈高に言う純日本的だった家庭がけっこう多かった。そんな環境下で、幻の時代を経た子供たちが大人になって、とてもひ弱で傲慢になってしまった。


 「時代の”風”を読むと、人生の答えが見えてくる」と誰かが言った。