Love Letter from Kobe
 『拝啓 藤井 樹様 あなたは誰ですか?』という手紙からだった。中山美穂という女性が素敵だと思ったのは。映画「Love Letter」をビデオで見たのは何年前だったのだろう。あの二人の女性の手紙のやりとりを映像で見つめながら、どっぷりと郷愁のようなものにつかりこんでしまっていたことが。

 それから今夜、年末に録画しておいた映像を再び見た。記憶にあったのは中山美穂だけで、豊川悦司も酒井美紀も新たな記憶のようになった。ドラマ「白線流し」とオーバーラップする配役は全然気にならなかった。そして、手紙の差出人、渡辺博子の居場所が神戸だったことを思い出した。

 やがてわかる同姓同名の同級生の男女、藤井 樹の存在。中学時代の夢の中の記憶。映像の恋の始まりは、フィアンセを山の遭難事故で失い、傷ついていたヒロコチャンからだったのだけれど、この映画のほんとうの恋はほんわりとあまく、切なく気づくことがなかった十代の記憶。

 ラストシーン、プルーストの「失われたときを求めて」の図書カードに残された藤井 樹の名前、その裏に描かれた樹の似顔絵。ようやく知るにいたった恋の告白。そこで岩井俊二氏の悦に入った表情が想像できなくもないが、けちをつける気はさらさらない。

 自分は評論家ではないので、細部にわたっていろいろ注文をすることはしない。ただよいかよくないか、楽しいか楽しくないか、面白いか面白くないかを判じるだけである。もちろんひとりよがりな感想ではあるけれども。で、「Love Letter」はどうだったかというと、やっぱりよかったのである。問答無用で、ほのぼのとしているのだ。