THE OPEN CHAMPIONSHIP
第131回全英オープンゴルフ選手権
( July 18-21 Muirfield Scotland )
 
 昨晩は珍しく夜更かしをした。零時半には眠るつもりだったのだが,11時50分より見始めた全英オープンゴルフに魅了されてしまっていた。眠りについたのは午前3時,今日は寝不足だが,久しぶりにいいゲームを見た充足感がある。

 世界のゴルフ界は、タイガー・ウッズが頭抜けて頂点にいる。タイガーがプレイするところには,あふれるほどのギャラリーがつめかけ,そのスーパープレイに驚嘆する。だから,メジャー・トーナメントのテレビ中継は、自ずとタイガー中心に映し出される。

 予選ラウンドの二日間,そのタイガーとペアリングされたのが,日本の丸山茂樹とイングランドの新鋭ジャスティン・ローズだった。ジャスティン・ローズは4年前,高校二年生の17歳のとき,127回の大会で、アマチュアではありながら堂々4位に入賞している。イングランドのゴルフ界では,華麗なプレイと、長身に甘いマスクでベッカムなみの人気がある。5月の日本ツアー「中日クラウンズ」で優勝したのは記憶に新しいところだ。

 そのペアリングに世界のメディアは,エキサイティングな組合せだと注目していた。それは世界にはばたこうとしている丸山にとって,至極光栄なことだったろうと思う。その三人のプレイは,常時テレビ画面に登場することとなったが,三人は期待を裏切ることなく,素晴らしいプレイを見せてくれた。多くのギャラリーとメディアがとりかこむ中,丸山茂樹は怖気づくことなく,予選ラウンドをトップタイで通過した。これまでタイガーとラウンドする多くのプレーヤーが、彼の超人ぶりを目の当たりにし、また周囲の喧噪でリズムを狂わし,優勝争いから脱落していった。まだまだ,決勝ラウンドの二日間が残っているので,丸山が実際の優勝争いを演じることができるかどうかはわからないが,ゴルフ発祥の地、英国で、131回の全英オープンの歴史の中で、日本人プレーヤーが首位で予選を通過したことは、素晴らしい快挙にはちがいないことなのだ。

 二日間の丸山のショットの切れは,タイガーをも凌駕する素晴らしいものだった。23カ国のプレーヤが集まり,凌ぎをけずった予選ラウンド,ゴルフファンをもつ国々のメディアは、その多くの時間を丸山たちのプレーぶりに割いたことだろう。その中で日本の選手がいちばん輝いていた。これもまた,最古の歴史を誇るTHE OPENでの画期的なことだった。

 決勝ラウンドに残った選手は83名,最下位でもトップとは6打差だ。これほどの僅差でトップと下位が密集したことは記憶にない。予選を通過した全員に優勝のチャンスが残されている。むろん本命は,首位と2打差のタイガーだが,リンクス特有の強い風とスコットランドの気まぐれな自然は,選手にどんな好不運をもたらすかわからない。この白夜の季節に,冷たい風雨があり,選手はベストやセーターを着込んでいた。ゴルフとは,個々のプレーヤーにとって、実にアンフェアなスポーツなのだ。ときとして疾風が吹いてみたり,ときとして穴ぼこへボールが転がり込む。途中から激しい雨が降ってみたり,激しい雨が晴天に変わったりする。最初のプレーヤーは午前7時ごろから,以後10分刻みで順にスタートし,ラストは午後3時ごろにスタートホールを出ていく。決勝ラウンドになると,下位の順位のペアから順にスタートしていく。決勝ラウンドはプレーヤーが半数になるので、スタート時間は凝縮される。

 丸山茂樹は,決勝ラウンド第3日目を南アフリカのアーニ―・エルスと最終組でスタートする。アーニ―・エルスは全米オープンを二度制覇したビッグネームだ。丸山には予選ラウンドのように歯切れよく,威風堂々とプレイしてもらいたい。

 第3日は,ムービング・サタデーといわれるほど順位の移動が激しい日だ。トップが下位に落ち,下位の者が上位に食い込む可能性を秘めている。今回の僅差では、よりいっそう順位の移動が激しくなるだろう。トップと4打差の片山にもチャンスはある。かろうじて予選を通過した久保谷,伊沢,谷口らにも上位に食い込むチャンスは残されている。

 最も望むことは、日本人選手がサンデー・アフターヌーンの18番ホールのグリーンに、いちばん最後でタイガー・ウッズと共に登場をし,名門・ミュアフィールドの観客から惜しみない拍手を送られることだ。優勝がベストだが,順位は問題ではない。最もゴルフを知り,最もゴルフというスポーツを愛する国民の心に、素晴らしいプレイをした日本人選手の名前を刻んでもらいたいのである。