サルビア (シソ科)
Salvia



 サルビアは下記の歌ほどには叙情を感じさせる花でない。ぼくには、子供達が花壇をとりかこんで、雄しべをとりあい、ほんわかと甘いその先端の蜜をなめる光景がよく浮かぶ。サルビアの花の歌は1960年代にできたのではないかと思う。あのころ、フォークギター片手に弾き語ったり、校庭のポプラの木を囲んで、少しの男子生徒と多くの女子生徒が合唱する姿を目にした気がする。おそらく作者の目にもサルビア自体が叙情的だったのではなく、君という存在の中に偶然サルビアが介在してこの歌を作らしめたのだろう。あの時代の夏、まだまだ家庭園芸は貧弱で、思いうかぶ花はひまわりか朝顔かマツバボタンだった。ひょっとしてサルビアの花がハイカラだったのかもしれない。また、ペチュニアやサフィニアでは歌の文句に使いにくい。

 さて、今年はうちの花壇にもサルビアが咲いている。アコスティック・ギター片手に、昔の杵柄で弾き語りをやってみようか。コードは簡単である。日没サスペンディッドにならないうちに。ギャラリーはもちろん、蜜目当ての息子だけである。「ダサい歌やなあ」というのは目に見えている。が、なまじっか郷愁にひたられるかみさんよりはずっといいのである。

 C   B    Am 
いつもいつもおもってた
F     G
サルビアの花を
C     B  Am F  G   C
あなたの部屋の中に投げ入れたくて

  E7    Am
 そして 君のベットに
    F    Dm   E7
 サルビアの紅い花をしきつめて
  Am
 僕は君を
   F     Dm    G
 死ぬまで 抱きしめていようと

なのに なのに どうして
他の人のところに
僕の愛の方がすてきなのに

 泣きながら 君のあとを追いかけて
 花ふぶき舞う道を
 教会の鐘の音は
 なんてうそっはちなのさ

とびらが開いて出てきた君は
偽りの花嫁
ほほをこわばらせ 僕をチラッと見た

 泣きながら 君のあとを追いかけて
 花ふぶき舞う道を ころげながら
 ころげながら 走りつづけたのさ


 サルビアの花 歌:早川義夫/詞:相沢靖子/曲:早川義夫


 サルビアの仲間は、世界の熱帯から温帯に約750種が分布する。シソに近い仲間で、茎葉に独特の芳香をもつものが多く、香辛料あるいは薬用に使われたりする。この花の雄しべは、上側の2本は退化してなくなり、下方の2本だけが大きく発達して目立つようになっている。

 最もよく栽培されるサルビアは、花壇植えの代表種のスプレデンシスで、単にサルビアといえばこの種をさす。スプレデンシスは光り輝くという意味。ブラジル原産の宿根草だが、通常は春蒔き一年草として扱われる。1822年にヨーロッパへわたり、日本へは明治半ばごろに入ってきた。

 色彩はほとんどが赤を原色とし、ついで紫色、ごくわずかに白がある。発芽生育には、高温が必要なため、温床がない場合は、五月以降の播種とする。また、園芸店で三月半ばごろから苗が売られているが、気温が低いと生育が思わしくないから、桜の開花が終わってたころ以降が安全である。盛夏に株が弱り、花つきが悪くなるときがあるが、そんなときは株を半分くらいに切りこんで、追肥をしてやると、秋には再び側枝を伸ばして、よりきれいな花をつける。

 花言葉 赤色 燃ゆる思い。憧れる。
     紫色 知恵。知識。
     白色 精力絶倫。勢力をもっている。