恋愛小説
 自分に関係する身近な人が、不慮の事故で次々と死んでいく。小学生のころ、愛する両親を交通事故で失い、それと同時に同級生の女の子が死に、「死神」と巷でうわさされるようになってしまった。聡史はそんな自分の運命を感じとって、けなげにも誰にも心を開くまいと決めていた。だが、親族でただ一人自分をひきとってくれたおばさんのやさしさに接したとき、少年の決意は翻意された。が、その翌日、学校から帰ってみると、そのおばさんが階段から転落死していた。聡史の「死神」は決定的なものになり、暗くはかない青春時代をすごしていく。

 聡史は富豪の一人息子だった。親の財産を自由に使える年齢になってのち、ひとり豪邸に移り住んだ。大学へも通った。まわりの学生からは暗くて存在感がないため、「幽霊」と渾名されていた。ひたすら誰とも親密にならないという決意の故だった。

 ある日、大学の構内の階段で、足を踏み外して、宙を舞って落ちてきた女子学生を受けとめる。聡史が初めて恋することになる瑞樹だ。が、聡史はかたくなに歯を食いしばって瑞樹を拒もうとする。「自分は愛するひとを死に至らしめてしまう」という孤独な苛酷な運命との葛藤だ。

 やがて、聡史は瑞樹とひたむきに恋をし、自分の気持ちに正直に生きていこうとする。とても瑞々しい恋愛模様だ。ふたりが出会った夏の日々は偽りのように幸福にすぎていった。が、秋深まるころ、瑞樹の姿が消える。連絡が全くとれなくなった。聡史は自分の運命を疑りかかる。まさかという思いともしやという思いが聡史を不安にさせる。

 ある日、電話が鳴った。瑞樹からだった。

 「貧血で倒れちゃって、今入院しているの。連絡しないでいてごめん。見舞いに来てくれるかな?」

 「・・・・・、行かない。絶対行かない。別れよう。二度と会わないでおこう。ぼくのせいなんだ」

 「そういうと思っていたから知らせなかったの。聡史のせいなんかじゃない。だから、顔見せにきてよ」

 瑞樹は脳腫瘍だった。聡史は悪夢の運命を払拭するために奔走する。瑞樹の家へ行き、強引に自分に関係あるものを貰い受け、二人の思い出をすべて燃し尽くして灰にする。そして、自身は薬物自殺を図ろうとした。

 もう一人の主人公、宏行が語り部として、一人称ぼくで細部を織りなしていく。金城一紀原作の「恋愛小説(対話編)」をWOWOWがドラマ化したものだ。製作プロダクションはあの踊る大捜査線のROBOT。瑞樹役の小西真奈美がなかなかにいい。

 宏行は恋人に裏切られ、傷心のときに聡史に声をかけられる。豪邸へ招かれ、自分の遺書の作成を依頼される。宏行が法律を学んでいたからだ。数々の価値ある絵画の鑑定など、二人の奇妙な交流の日々がしばしつづく。宏行は自分の恋の破綻を話し、それから聡史が瑞樹との恋物語を話しはじめる。

 遺書作成が終わった日、宏行は自分の運命について不安を感じる。別れた恋人からのメール、その返信を打つのに夢中になっていた。そのとき、宏行は駅の階段を踏み外し転がり落ちていった。

 その日は瑞樹の一周忌だった。遺書を書き終えた聡史は封をし、忌まわしい運命に終止符を打つつもりだった。が、用意していたはずの薬が消えていた。何かが落ちたような大きな音がする。画の額が落ちていた。元へもどそうとした。ふとその場所に何かが見えた。瑞樹からのメッセージだった。聡史は家中の絵画の裏を見ていった。最後に見つけたメッセージ、瑞樹が瑞樹そっくりに模写した裸婦の絵画の裏側には・・・・、ちょっと胸キュンのラストシーンだった。

 さて、宏行はどうなったか。それはドラマもしくは原作ででも・・・。