イーストウッドがハリウッドをチクリ
【ロサンゼルス=千歳香奈子通信員】虐待で心に傷を抱えたまま大人になった少年たちの悲劇を描いた映画「ミスティック・リバー」(10日公開)で監督を務めたクリント・イーストウッド(73)がロス市内でインタビューに応じた。
 同作品は昨年12月に発表されたゴールデングローブ賞のノミネートで作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞(ショーン・ペン)助演男優賞(ティム・ロビンス)の5部門に名を連ね、アカデミー賞でも有力視されている。イーストウッドの監督作が受賞すれば92年の「許されざる者」(作品賞、監督賞)以来となるが「一番重要なのは作品賞だよ。でも大事なことはできうるベストの仕事をして、そういうことはあまり考えないことだな」と無欲を強調した。
 イーストウッドが原作小説を読んで映画化を熱望したが、「虐待」という重いテーマのため映画会社から次々と断られ、ようやく完成にこぎつけた。「今のハリウッドは若者向けのエンターテインメントばかり。だから、こういう映画はかえって新鮮かもしれない。ただしヒットするかどうかは僕には分からない。多くのひどい映画がヒットする時代だからね」。
 今作が監督24作目。監督を務めた作品には、ほとんど俳優として出演しているが、今回は監督に専念している。「今は監督をする方を楽しんでいる。でも僕のために素晴らしい役柄を書いてくれたら『この役をやりたい』と思うかもしれない」。73歳になっても俳優への情熱は失っていない。
 過去にカリフォルニア州カーメル市長を務め、政治への関心は今も高い。同州知事に就任したアーノルド・シュワルツェネッガーには「今のところよくやっている」とエールを送る。一方で日本の外交官2人がイラクで殺害された事件に触れ「外交官の遺体が日本の空港に戻ってきたとき、なぜ小泉(首相)は迎えにいかなかったんだい。どんなに忙しくても行くべきだった」と厳しい言葉が飛び出した。(日刊スポーツ)