愛と資本主義
 毎月、月末になるとWOWOWから翌月の番組表が送られてくる。WOWOWは概して洋画の有料放送だが、いわゆる新作ものはビデオレンタル開始よりもかなり遅れていて、新鮮味に欠けるきらいがある。が、CMはないし、字幕なので他の民放の洋画劇場よりもずっと楽しめる。またタイムリーに見ることができないので、ビデオ録画しておいて、ゆっくり時間があるときに見ることにしている。旧作で見忘れていた映画、再度見たいと思っていた映画が偶然に番組表にあるときはとてもうれしい。

 ときどき海外ドラマなどがWOWOWで初公開されるときがある。7〜8月に放映されたスピルバーグのTAKENやCSI(科学捜査班)などにはとても興味をそそられたものだった。う〜ん、じつにおもしろかった。

 今年の春よりWOWOWではテレビドラマを作成し、放映している。今月の目玉は表題の『愛と資本主義』、中村うさぎの長編小説である。若手ホストに伊藤英明、ホストクラブに大金をつぎ込み、失踪してしまうナツミを高橋惠子が演じている。愛はお金で買えるのか、中年女性の哀愁を、あの五木寛之の『青春の門』でアメリカ兵と大胆な濡れ場を演じた、かつての関根恵子が魅せてくれるらしい。パンフではかなりのメイクを施しているからかもしれないが、ホストと寄り添う黒のドレス姿のもろ肌の惠子のアップは、妖艶であるし、むごたらしくもある。

 第一作、『センセイの鞄』は大ヒットだった。平成15年度民放テレビドラマ番組最優秀賞を受賞している。三十路で独身の教え子の小泉今日子と、妻をなくした先生だった柄本明とのふれあいが、川上 弘美の小説から抜け出てきたようだった。

 で、『愛と資本主義』は11月29日の放映予定。作者の中村うさぎを見ていると、彼女のほうがナツミに似合っている。事実、この小説は彼女が新宿歌舞伎町のホストクラブへ一年間通いつめて、さらに大金をつぎ込んだ末に生まれたという超リアルな物語であるらしいから、まさしく彼女がナツミなのだろう。

 ところで高橋恵子は現在49歳。夫の勧めで舞台復帰して人気復活のようである。たぶん20代後半のようだったと思う。舞台をドタキャンして、人里離れた山奥で3年間、不可解な隠遁生活を送り、ゴシップ週刊誌のときのひとだった。またはじめて脱いだのが33年前の16歳のとき、センセーショナルなデビューだった。山を下り、高橋氏と結婚して二児の母親となり、長くその姿を隠していた。そして、ある日突然高橋恵子と名を変え女優に戻った。それがいつのことだったか、全くに記憶がない。いつもぼくの記憶にあるのは、米兵の騎乗位にある恵子だった。妻であり母である恵子が、彼女にとってまちがいなくネガティブだったお金で愛を買おうとする役をどんなふうに演じるのか、時代錯誤な郷愁を打ち消しながら見てみたいと思うのである。