小さな秋
 彼岸がすぎてよりめっきり日が短くなった。ちょっと前まで午後七時ごろまで明るかったというのに、このごろでは六時をすぎると暗くなりはじめてきた。欧米のサマータイムも今月いっぱいで終わりになり、時差は通常通り、現在より一時間遅れることになる。そうしてあと一ヶ月もすれば、日々夕闇の迫りくるのが早く感じられ、いわゆる『秋の日はつるべ落とし』を実感する。

 中秋の晴天は一年中で最も爽快な気候だ。天高く、澄みきった青空の下、レジャーにスポーツに最適の季節である。が、一雨降るごとに気温は肌寒さをまし、冷たい風に吹かれるたび、人は冬の到来を間近に感じ、束の間、寂寥感にこころ奪われるときもある。

 そんな季節に我々は、それぞれに小さな秋を見つけてすごす。今年はマンジュシャゲの開花が遅いようだが、稲穂の金色と対をなすような真っ紅な花。田園での柿の実り。河原に群生するススキの穂。野原に自生する秋桜(コスモス)、山道でのアケビの実、森林でのドングリ、クリの実。偶然にも発見するマツタケ。ナデシコ、オミナエシ、ハギ、キキョウ、キクの花。夜、季節のメロディーを奏でてくれる虫たち。そして、次々に色づく紅葉。

 これから50日たらず、落葉とともに秋は終わる。今年は、毎年何気なく見すごしていた「小さな秋」を見つけようと思う。季節は何度も巡りくるものだけれど、2003年の秋は一回きりだ。けっして感傷的ではなく、なつかしのサトウ・ハチロウの歌のように、ときめきを感じながら・・・。

 小さい秋