ソフトバンク&ヤフー
 ネットバブル終焉より三ヵ年、その後日本の景気低迷はさらに甚だしく、その象徴たるものは大手銀行で、あのころの行名をそのままにとどめているものは皆無だ。

 ところで、全くに景気回復の光明が見えてこない中、5月はじめより株価が上昇をしてきた。株価は経済の先を見るという。そう考えれば、NECや富士通の株価が2倍になったということで、先行きの見通しがよくなってきたのかもしれない。

 が、ここ2週間ほどその主力株が低迷してきた。息切れの様相である。2ヶ月ほどの株価の上昇は、実体経済を反映したものではなく、外国人主導の金余りによる金融相場だという向きもある。

 本日、38日ぶりに東証一部の売買株数が10億株を割り込んだ。直近、商いが細りつつあったのだが、大台を割り込んだことで、弱気筋の見通しに不安感が台頭してきた。そんな状況下で着実に商いをこなし、まっしぐらに株価を上昇させているのが、ネットバブル崩壊の張本人ソフトバンクとその子会社ヤフーである。

 本日の値上がりによって、ソフトバンクの時価総額は11.824億円、ヤフーにおいては21.103億円、両社を合わせると32.928億円となった。これは東京証券取引所上場企業の時価総額において、ソニーに次ぐ第9位となり、32.871億円の松下電器産業上回ったことになる。

 松下電器産業グループの従業員の総数は288.324名、単独で52.376名、平均年収は700万円前後と推測される。一家族4人として、松下電器産業グループは、およそ100万人の生計を成り立たせている。下請け企業などを加えればさらに人数は増えるだろう。

 片や、ソフトバンクグループの従業員は1.000人に満たない。四季報を見る限りでは、ソフトバンク本体はきわめてグレーな企業で、3年連続の赤字であり、従業員総数はわずか77名と公表されているにすぎない。また、業績絶好調のヤフーでも625名ということで、雇用、納税、社会保険金納付などという社会貢献面においては、スズメの涙のような状態である。

 もちろん従業員総数は、売り上げ、純利益にそれなりに比例して適正な数字が成り立つのであるから、ソフトバンクグループと大手企業の松下やソニー、トヨタ、日産、NTTドコモなどと比較することに無理はある。とはいっても、ソフトバンクグループの企業価値は想像を絶する数値である。100万人の人々の生計を成り立たせる企業群と、わずか1.000人未満の従業員でまかなえる企業の価値が同等もしくは、10位以下の大半がそれ以下であるという事実は、実にいびつである。

 ソフトバンクカンパニーが株式市場をリードしなくてはならない状況が続く限り、経済の先行きは暗いのかもしれない。ヤフーは便利だけれども、有害なものもたくさんにある。ぼくも弱気筋の一人である。悪い事態を想定して生きているから、どうにか未来があるという、これもまたいびつな構造である。

 とにもかくにも3年前のように株価が先走りして、虚像と実像を見間違えないことである。抜き足差し足、のらりくらりでよいから実態ある経済回復を望みたい。青年たちによりよい雇用をと切に願う。