梅雨
 雨季ともいえるほどに今年の梅雨はよく雨が降る。この三週間ばかり、丸一日雨がなかった日は四日しかない。エアコンのおかげでむし暑さはそれほどではないが、これだけ曇ってばかりいると、うっとうしくてしかたがない。

 夏野菜の成長が例年になく早い。葉が濃緑色に色づき非常に繁茂している。畝と畝のあいだに入ると、まるでトウモロコシ畑のなかにいるようだ。が、トウモロコシ畑にイメージする夏の青空はなく、ジャングルのような薄暗さと蚊の群れにうんざりさせられる。トマトやキューりはぼくよりずっと背が高くなり、ナスやピーマンですら、ぼくの肩ほどになっている。カボチャは垣根代わりのあじさいを這い登り、ブロック塀を乗り越えて隣の庭にまで侵入していた。全長10メートル以上はあるカボチャのツルは、またたくまにスイカやプリンスメロンを覆いつくし、ぼくの両腕いっぱいほどの巨大な葉は侵略者でもあり、カラスからのカモフラジュー的役割を担いそうでもある。実のところ、スイカやメロンの実が成っているのかどうかさえ、見えないありさまなのだ。

 ほんとうによく雨が降る。雨が降るから手入れが滞りがちで、やむなく傘をさして菜園に入ると、へちまのように巨大になったキューりを30本以上も見つけてしまうのである。今週いっぱいもほとんど雨の予想だ。植物は適度な湿度と乾燥を必要とする。健全な生育に十分な陽光は欠かせないものであり、そろそろ梅雨が明けてくれないと灰色カビ病やウィルス病が伝播する可能性がなくもない。

 季節が季節らしいと、四季折々の日本らしさが見られると思う。夏は暑く、冬は寒く・・・、桜が美しく咲き、紅葉が見事に色づく。そう思えば去年の紅葉は近年になくすばらしかったし、今春の桜の咲きぐあいも最高だった。が、梅雨だけはいただけない。ロンドンの暗い冬がたまらなくいやなように、日本の梅雨もこれくらいで十分だ。