プロ野球考
 プロ野球が面白くない。タイガースが独走しているからではない。今年の野球そのものが大味すぎて、微妙にかくし味のようなスパイスがないのである。

 ときどきハーフのゴルフのスコアじゃなかと思うゲームがある。4.5.2.3.6.2.3などと数字が連続するとプロゴルファーのスコアカードみたいだ。ゴルフは同伴競技者のスコアを記入するのがルールだから、まさに敵の点数。

 近頃のジャイアンツはベイスターズと変わらぬほどによわっちい。よそからFAで高齢の選手をとりまくるから高齢化の弊害が出てきている。去年がピークだった選手が多く、タフな松井がいなくなっただけで沈没してきた。タイタニック現象だ。

 独走しているタイガースも明日はわが身だ。金本35歳、檜山34歳、片岡35歳、矢野35歳、藪34歳、伊良部35歳と続いていく。さて、彼らが来年も同じように活躍できる保証はどこにもない。

 パシフィックリーグはセントラルリーグよりレベルが低いのだろうか? 去年までの打てぬタイガースから追い出された選手たちがかなりの活躍をしている。バッファローズの北川、星野、ファイターズの坪井、伊達、ライオンズの平尾、高波とけっこういる。

 去年ぶっちぎりで優勝したライオンズが、日本シリーズでジャイアンツに惨敗したことを思えば、パのほうがかなり貧弱だ。が、セでも、今年のタイガース以外のチームの野球もまたアマチュア野球ほどにレベルが低い。

 どのチームも外国人投手が先発陣に名を連ね、彼らだけがメジャーリーグ流に中四日のローテーションで投げている。日本人投手は中六日、一週間に一回の登板だ。また、たいていのチームのクリーンアップは外国人選手が打っている。彼らの活躍次第で得点が大きく増減する。

 外国人選手はそのほとんどがメジャーに残れなかった選手。だから、アメリカの3Aの優勝チームと日本一のチームが戦えば、たぶん日本のチームが負けると思う。もちろん七回戦制としての仮定である。

 メジャーリーグ機構は、メジャーリーガーたちをオリンピックに派遣しないことにしている。シーズン中の日程に支障をきたすからだ。が、薬物使用の選手も多く、優勝してもメダル剥奪の可能性が否定できないからでもある。

 少々うがった見方かもしれないが、松井よりイチローのほうがたくましく見えるのはなぜだろう。日本にいたころ、はるかに松井のほうが筋肉質だった。パワーの差は歴然としていて、そのホームラン数は比較できるものではなかった。

 彼らは一歳ちがい、松井のほうが年下だが、誰もがパワーでは松井、スピードとテクニックではイチローと思っていたことだろう。だが、テレビ中継を見る限り、パワーででもイチローのほうが上回っている。打球の弾道が松井よりイチローのほうが間違いなくパワフルなのだ。

 メジャーリーガーの主力選手には30代後半から40歳前後が多くいる。おなじみのバリー・ボンズ、ランディー・ジョンソン、ロジャー・クラメンスなどなど。日本の選手寿命と比べて5歳以上長い。理由はよくわからない。人種の差だろうかとも思う。でも、日本人メジャーリーガーのパイオニア、野茂英雄もまた35歳となってますます活躍を続けている。

 プロ野球中継を見ていると、彼らがプロではなくアマチュアだったなら楽しめるんじゃないかと思ったりもする。へたくそなプレイも草野球なら面白おかしく笑ってすませるからだ。メジャーリーグの落ちこぼれ選手たちが頼もしく見え、怪我ばかりするジャパン選手がひ弱に見え、結果においてもホームランキングはまちがいなくダントツで外国人選手であること、そんなふうに考えると、日本のプロ野球そのものが虚弱に見えてくるのである。

 長嶋茂雄読売巨人軍名誉監督が、アテネオリンピックの強化に向けて活動している。アテネではシーズン中にかかわらず、日本プロ野球界も中心選手を派遣するようだ。が、野茂やイチロー、松井たちはメジャーリーガーだから出場が許されない。日本プロ野球の威信をかけて臨むアテネオリンピックになるのだが、アメリカのメジャーの2軍チーム、台湾チーム、韓国チーム、キューバチーム相手に勝てるという力強さはぜんぜん感じられない今シーズンである。