オキーフの恋人 オズワルドの追憶
 スティーブン・キングの「ドリーム・キャッチャー」はどうにか全巻読み終えたが、辻仁成の「オキーフの恋人 オズワルドの追憶」下巻は読むことをやめにした。上下巻とも引き違い書棚の裏側へ放りこんでおく。もったいない3.360円だった。

 この小説はやたらエロシーンが多くて、そのくせきざな文学的表現がいっぱい出てくるので辟易させられた。まるでアダルトビデオに出てくるレベルの連中が、もったいぶって難解な用語を使っているかのようである。エロ小説を読むのなら、単刀直入にどきどきわくわく興奮するフランス書院の物を読むほうがずっといい。

 文学は文学らしく、娯楽小説は娯楽小説らしく、エロ小説はエロ小説らしくが、僕の個人的感想である。「ドリーム・キャッチャー」は、キングの作では退屈な部類だったが、彼なりのエンターテイメントだった。僕は辻氏におちょくられているような気になったのである。以下の冒頭の一節に興味をもたれたかたは、物は試しにと読破を試みられるのも一興かと・・・。

 『ぼくには人に言えない秘密がある。誰にでも一つや二つは秘密があるものだが、ぼくの秘密を言葉で説明するのは非常に難しい。ぼくにはぼくにしか見えないインナーチャイルドがいる。いつからその子がいるのか分からない、気がついたときにはすでに傍(そば)にいた。<中略>

 インナーチャイルドのオキーフはぼくが仕事をしているときに現れて、机の上でごろごろとしている。初めて恋人が出来て、セックスをしようとした時にも現れて邪魔をした。小さなオキーフは少女のくせに、小さなペニスを持っていた。それをわざわざ勃起させて、ぼくを困らせた。誰にも言えない秘密である』