Go Annika
 テキサス州フォートワース発。5月22〜25日、女子ゴルフの第一人者、スウェーデンのアニカ・ソレンスタムが女子として58年ぶりに米男子ツアー(バンク・オブ・アメリカ・コロニアル)に出場する。その組み合わせが昨日発表され、日本ツアーでおなじみのディーン・ウイルソンとアーロン・バーバーと予選ラウンドを共にすることになった。

 アニカは女子では実力人気ともに史上最強といわれるだけあって、会場となるコロニアルCCでは非常な盛り上がりである。3日前より、米国はもちろん、母国スウェーデンなど、世界各国からたくさんの報道陣が集まった。例年の3倍以上となる588人分の取材章が発行され、会場の売店では「Go Annika」と書かれた帽子やサイン入りボールなどが売られるなど、女王は既に「時の人」となっている。

 彼女の男子ツアー参戦について、多くのゴルフファンが興味津々であることは疑うべくもないが、実際に受けいれる側の男子アメリカツアープロゴルファーたちからは何かと賛否両論が出ていた。負ければ何を言われるか分からない男子プロは戦々恐々していたともいえる。とりわけ世界ランキング4位、フィジーのビジェイ・シンは「男子ツアーに出場するのはばかげている」「いっしょにラウンドすることになったら棄権する」「「彼女の予選落ちを願う」と出場に異議を唱えたと伝えられ、批判が高まっていた。結局、シンは奥さんとのバカンスの約束を理由に敵前逃亡を決めこんでしまった。

 アニカ・ソレンスタムは語っている。「とても興奮している。歴史的な週になると思う。これは人生一度きりの挑戦になると思うので楽しみたい。誰も私に期待していないし、失うものもないのだから」「エベレストに登るようなもの。何年もこのために練習してきた。これが小さな子供たちや、女性にも男性にもよいお手本になれればと思う」

 ―批判に対しては
 「知っている。私が言えるのは、『誰も自分の意見を言う権利をもっている』ということ」

 ―この出場で何を証明したいのか、どんなプレーをしようと思うのか
 「何かを証明するためではなく、自分を試したいだけ。私はいつも自分を磨いてくれる選手を探してきた。そして今、世界最高の選手たちとプレーする機会を得た。これを今後の練習の動機づけにしたい。自分にとってのベストのゴルフができれば成功。ふつうの調子ならパープレイでいけると思う。いつものクラブを持ってきた。感覚と本能を信じ、いつもと違うことをするつもりはない」

 先々週、日本女子ツアー「加ト吉クイーンズ」に招待選手として参加したアニカは、時差ぼけにもかかわらず、他のプロを寄せつけず、赤子の手をひねるほどに圧勝した。彼女の招待金額はトーナメント総額と匹敵し、アニカの実力と人気のほどを見せつけて離日した。男子プロと比較し、パワー(飛距離)では劣るものの、限られた距離内での正確性、技術、精神力、感性は、一流男子プロと比較して勝るとも劣らない。

 先週、欧州トーナメントに参戦していたタイガー・ウッズが、ドイツよりエールを送っている。タイガーは、米男子ツアーに初挑戦するアニカに対する全面的支持を表明、「彼女には4、5回のチャンスが与えられるべきだ」と述べた。またウッズは「彼女の実力を判断するなら、4つか5つの大会に出場させなければフェアとは言えない」と話した。「1試合だけでは何が起こるかわからない。首が痛いこともあるし、調子が出ないときもある。仮にそうした試合だけで判断されるとしたら不運なことだ」とつけ加えた。また、ビジェイ・シンが、ソレンスタムと同じ組になったら棄権すると語ったと伝えられたことについては、「残念だ」と述べた。そして「それが皆の共通した意見だとは思わない。ビジェイの考えに過ぎない」と加えた。また、個人的に電話で男子相手の振舞いかたをアドバイスし、アニカを勇気づけ、励ましたという。

 年初からの予定でタイガー自身が参加しないのは残念だが、ビッグネームではフィル・ミケルソンやセルヒオ・ガルシア、デビッド・トムズ、ニック・プライス、日本から丸山茂樹らが出場を予定している。スポーツのなかで、ゴルフが最も年齢性別による力量の差がつかないともいわれるが、それはパワーだけではないテクニック、微妙な感性、頭脳的判断、繊細かつ強靭な精神力を要求させるからだと思う。さて、今週末は「Go Annika」のバッジをつけてBS放送を見るとするか。がんばれアニカ、しなやかな蝶のように舞い、普段のままに実力どおりのプレイを見せて欲しい。そうして、男とか女とか、若いとか若くないとか、肉体の強弱とかの垣根を超えたゴルフというスポーツの楽しさを示してもらいたいのである。