アメリカの野望 or 聖戦
 時代錯誤のようにアメリカ国内では、政権批判の自粛を強要する動きがある。それは人気カントリー音楽グループ、ディクシー・チックスのメンバーが、ロンドン公演中、イラク攻撃の急先鋒ブッシュ大統領批判を行ったことに端を発している。彼女たちは、国際社会から孤立しつつある自国を心配し「大統領を恥ずかしく思う」と発言したのだった。

 その報を受け、一部のラジオ局はCDの不買や廃棄を呼び掛け、グループの活動を排除する騒ぎになった。そのためリーダーのメインズさんは、14日「大統領への敬意を欠いていた」と謝罪せざるをえなくなった。またそのせいでもなかろうが、1950年代に映画関係者が芸能界を追放された「赤狩り」の再来を懸念する声も出始め、「非国民」と非難されるのを恐れた芸能人は政治的発言を控えかけている。

 1960年代のベトナム戦争時、ボブ・ディランやジョーン・バエズらが立ち上がり、反戦歌を歌っていたとき、ジョージ・ブッシュも彼らと同じ年代だった。病めるアメリカを象徴した、泥沼のベトナム戦争、あのジャングルで生き延びた兵士たちの多くが、後々にまで心身に深い後遺症を抱え続けている。

 12年前の湾岸戦争、あれはアメリカ好況の前兆だったと、とらえるむきがなくもない。その後10年間ほどのアメリカ経済のバブル並みの好況を考えれば。同時テロ以降、目に見えない敵と戦うことをアメリカは恐れてきた。だから、アルカイダが占拠するアフガンに攻め入った。そして、次はサダム・フセインのイラク。だが、うがった見方をすれば、戦争特需による景気�X字回復という構図が見えなくもない。

 無為な戦いと信じて,戦争反対を勇気を持って唱えられる、それが自由の国アメリカ、民主主義の国アメリカ、だからやっぱり戦争反対に立ち上がる若者はいる。あのころのボブ・ディランのように、ジョンレノンのように。


 ブルース・スプリングスティーン、セットのオープニングを変更して反戦を訴える(BARKS)

 Bruce Springsteenは今年のツアーでオープニングの選曲を少し変えているようだ。昨年のライヴでは1回を除いてすべてが「The Rising」で始まっていたが、2月28日(金)のジョージア州ダルースの公演は「No Surrender」でスタートした。続く3月2日(日)、テキサス州オースティンのオープニングはEdwin Starr「War」のカヴァーだった。この選曲には注目すべき別の理由があり、テキサスの州都でGeorge Bush大統領がかつて住んでいたオースティンで取り上げた「War」は、「What is it good for? / Absolutely nothing!(何の得があるんだ?/まったく何もない!)」と訴える反戦ソングだ。

 28日のショウではこの曲の後に「Born In The U.S.A.」のイントロが流れSpringsteenは次のように語った。「イラクに関しては平和的な解決を望んでいる……軍隊を無事に帰還させてほしい……。この曲は'83年にベトナム戦争について書いた曲だ。もう2度と書きたくないんだ」

 Springsteenはまた『The Rising』の「Empty Sky」をプレイした後に「平和への祈りとしてこの曲を捧げたい」とも語っている。Springsteen The E Street Bandは3月4日、フロリダ州ジャクソンヴィルでコンサートを行なう。

 Bruce Simon NY (C)LAUNCH.com


 ビースティー・ボーイズ、反戦ソングをネット公開(VIBE)

 4月19日に東京ベイNKホールでチベタン・フリーダム・コンサートを開催するビースティー・ボーイズだが、現在、オフィシャル・サイトBeastieBoys.com(http://www.beastieboys.com/)で新曲「In A World Gone Mad」を公開中だ。「狂った世界の中で、正しい考えを持つのは難しい」という歌詞で始まるこの曲の中で彼らは、アメリカが主導する対イラク戦争を痛烈に批判している。アダム・ホロヴィッツは「この曲は反米主義やサダム・フセイン主義を主張するものではなく、不正な戦争への異議を表明するものなんだ」というメッセージを寄せている。

 [VIBE 2003年3月13日]


 R.E.M.のマイケル・スタイプが反戦を表明(BARKS)

 R.E.M.のMichael Stipeが対イラク戦について自らの考えを明らかにした。NYで行なわれたU2のBonoを称えるイベント、Bono MusiCares Person Of The Yearの中でStipeは、アメリカが実際に戦争を視野に入れていることは信じ難いと述べ、George W. Bushの職務はジョークだと付け加えた。

 「アメリカってのは一体何なんだ? 何をしようっていうんだろう? こんなことになるなんて信じられない。誇りに思うのは……僕は平和の行進が行なわれている間、NYに向かう飛行機の中にいた。だから、行進に参加したすべての友人と隣人たちに胸を張ってもらいたい。自分はそれができなかったから。アメリカが戦争をするなんてあっちゃいけない。それに、僕らは民主主義なのに大統領が非民主的なやり方で決まったのが今も信じられない。彼の父親が設置した最高裁でだよ……そりゃあ、たやすいはずだろう?」

 Stipeは現在、R.E.M.の『Greatest Hits』に収録する新曲を制作中。バンドは今年の夏、ツアーを行なう予定。

 Darren Davis NY (C)LAUNCH.com


 ディクシー・チックス、ブッシュ大統領を批判したコメントについて釈明(BARKS)

 海外で最新アルバム『Home』をプロモーション中のDixie Chicksが、先日ブッシュ大統領に否定的なコメントをし、議論を呼んでいる。

 3月10日(月)にグループがロンドンでライブを行なった際、Natalie Mainesは観客に向かってこう話した。「みんな、わかってると思うけど、私達はテキサス出身のアメリカ大統領を恥ずかしく思ってるわ」

 この声明は米国内であらゆる反応を引き起こし、3人は公式サイトで自分達の立場についてさらなる説明をしなければならなかった。「何週間も海外にいて、アメリカ政府の姿勢について報道されたニュースを読んだり、追ったりしているわ」とグループは言う。「ここでは、驚くほど反米感情が広まりつつある。我が国の軍隊を支援していたら、イラクとの戦争が始まり、罪のない人々の命が奪われる……これほど恐ろしいことはないわ」

 Mainesはこうも言う。「大統領は国内にある多数の意見を無視し、世界の国々から孤立していると思う。私のコメントは、そんな不満から発したもの。自分の意見を口にするのは、アメリカ人であることの特権のひとつよ」

 Dixie Chicksは、3月19日にドイツのミューニックで公演を行なう。

 Margy Holland Nashville (C)LAUNCH.com


 ユッスー・ンドゥール、対イラク攻撃に反対し全米ツアー中止

 [ダカール 8日 ロイター] セネガルの生んだ世界的ミュージシャン、ユッスー・ンドゥールが、米国の対イラク政策に抗議して、全米ツアーを中止した。
 ンドゥールは8日、ロイター通信に対し、「対イラク戦争の意味がわからない。今、戦争が起これば、真っ先に犠牲になるのは女性や子どもたちだからだ」と話した。
 「世界の多くの人々と同様、わたしはこの戦争に反対だ。従ってツアーをキャンセルした」という。
 ネナ・チェリーとのデュエットで「セブン・セカンズ」を大ヒットさせたンドゥールは、3月26日から5月15日まで全米各地で計38公演を予定していた。
 「紛争中の国に滞在するのはいい気分ではないし、そのような国でツアーをするなんて不可能だ」という。(ロイター)