連絡船
 私たちはすべて見えぬ赤い糸で結ばれ、それは遠く伸びてきっとある女に結びつけられている。この赤い糸はその子を嫁にもらうことを宿命づけていという話を国語の教師から聞いた青森中学校生徒太宰治は、弟と港の桟橋に出て、見えぬ自分たちの女の子について話しあった。そのとき、海峡を渡ってくる連絡船が、大きい宿屋みたいにたくさんの灯りをともして、ゆらゆらと水平線から浮かんできた。