一本!
 小四の息子が近頃、不倫および離婚に敏感になっている。ぼくが直接に聞いたわけではないのだが、妻に「お母さんは、絶対不倫をしないで!」と言うのだそうである。さらに「もしそんなことしたら、ボクはこの家を出て行くから」と強く念を押すのだという。

 今朝、その不可解な息子の話の次第を、わがかみさんが実に神妙に語ってくれた。息子のクラスでは、この一年足らずの間に、クラスメートのおよそ二割の姓が変わったらしい。離婚、再婚、再々婚と・・・・・、いちばん変化の激しかった子供は四つの姓を名乗ったそうである。

 その変動の一番の原因は、お母さんの不倫にあるという。いや、実に生々しい現実ではある。不景気なご時世ではあるが、稼ぎは人並みほどにしかなく、夫婦共働きで、炊事洗濯、子育ては嫁さん任せ、家にいたら寝転んでばかり、帰りは酔っ払ってばかりの亭主に愛想をつかせた女が、挙句よその男へと走っていく・・・・・、そんな光景が想像できなくもない。

 世の中が悪いのか、男がだらしなくなったのか、女が強くなったのか、そんなあほらしいわけなど知りたくもないが、可哀想なのはいつも子供たちだ。小四の子供たちが、学校の中で不倫の話をし、また常識的な出来事として感じてしまうことは、現在が決していい世の中だとは言いがたい。

 とは言っても、いやなやつと無理して暮らすより、さっぱりこれまでのしがらみと縁を切って、出直すことがよい場合も往々にしてあることも事実だ。まあ、男と女の世界だけは、東西南北、古今東西、話のネタには事欠くことはない。

 で、かみさんのオチ。息子がこう言っていたという。「おとうさんは携帯でよく女の人とメールしたり、話したりしてるけど、あれは昔からのくせなんやから」