映画評論家にはなれない!
 きのう、公開初日の『戦場のピアニスト』を見てきた。こんなことはめったにないことで、ここ十数年のうちでも記憶にない。映画のほうはCMにあるとおり、第二次世界大戦の当初の、ナチスドイツのワルシャワ侵攻を描いていくものだが、自分の胸のうちに『海の上のピアニスト』のイメージがあったことは否めない。

 ナチス占領下のポーランドで悪名高いホロコーストを生き延びたユダヤ人ピアニストの手記を、ロマン・ポランスキー監督が映画化したもので、映画の中でピアノ曲がサウンドトラックとしての叙情を誘う場面は、意外なほどに数少ない。これはリアリティーあふれる戦争実話だった。

 『戦場のピアニスト』の主人公シュピルマンはどんどん薄汚れてくる。これは身体が薄汚れるということでもあるが、身体が汚れると同時に心までもが薄汚れてくる。

 とにかく考えることは常に食べ物のことばかり。目の前で爆弾が炸裂しようが、銃撃戦が起きようが、人がバタバタと殺されようが、飢えた主人公はずっと食べ物のことばかり考える。そのさもしさ。そのあさましさ。音楽を愛し、家族や友人を愛し、祖国を愛していた主人公が、わずかばかりの食べ物を求めて目をギラギラさせる。だがこれこそが、この映画で描かれる戦争のリアリズムだ。戦争は人間を別の人格に変えてしまう。人間を動物並みの生き物へとおとしめる。

 ぺアシートでの鑑賞は思惑はずれのものとなってしまった。およそ二時間半、退屈することはなかったが、僕の目の前にあの「1900」は現れなかった。だが、シュピルマンは、気まぐれなドイツ将校の指示によって、最後のピアノ演奏を試みることによって、蘇生し、至高の芸術へと上りつめていくのであった。そして、戦争は終わりを告げ、シュピルマンの物語が実話であったことに驚かされるのである。

 詳しく的確な映画評はこちらのほうで。
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