一日
 朝食は日曜日以外、たいていNHKの朝ドラの時間。決まってトーストとサラダと牛乳の組合せ。10月より、サラダは道向かいにある菜園のサニーレタスがベースとなっている。もちろんぼくが育てたもので、外葉をちぎりながらの収穫だから、寒さと病気に強いサニーレタスは内葉が徐々に成育しているので、春にとうが立つまで食することができる。歯ざわりが柔らかくて、ちょっぴり苦味があって、その苦味が、玉チシャと呼ばれるなじみのレタスよりも毎日を飽きさせない。赤茶が混じった緑の葉は栄養もきっとあることだろう。

 それで朝ドラのことだが、見たくて見ているのではないが、まあかみさんが楽しみにしているのでしかたがない。二年前の「ほんまもん」は結構よかったと覚えている。が、「まんてん」のほうは今のところあまり面白くない。気象予報士をめざすまんてんが、スーパーの売上を天気予報をもとに伸ばして行くくだりだが、ストーリーが稚拙すぎる。あんなことで商売が繁昌するなら、ヤオハンもニコニコ堂もマイカルも潰れてはいないし、ダイエーだって人工呼吸器をつけずにすんだだろう。大型店舗がきて,パパ・ママ・ストアーが店を閉めるに至ったりはしないだろう。

 とまあこんなことをごちながら、八時半過ぎにデスクにつき、二台のPCをオンにして、日本経済新聞を読む。もちろん一番長い時間目にしているのは経済欄だ。財務短針のところはとりわけ詳しく読む。そして、九時になると男女の二人がやってくる。ひとりは同級生だった所長、実務を取り仕切っている。もう一人は元美容師の主任、事務を専任している。ちなみに所長は妻子もちだが、主任は独身である。これ以上話すと、いらぬことに及びそうなので口を閉じる。

 そうして、ランチタイムがきて,ティータイムがくる。所長は出入りが激しい。禁煙なのに、同級生の馴れ合いで、すぐにタバコを吸いはじめるから出払っていてくれたほうがいい。面倒な書類の処理があると、タバコを吸わないと神経が集中できないらしい。主任のほうはちょっと口数が多いのが玉に傷だが、髪が伸びるといつでも散髪してくれるから便利でいい。といって、散髪代をケチっているわけじゃない。その分以上はランチをご馳走している。

 午後六時を過ぎると、ぼくが仕事をしていてもいなくても「ご飯ですよ!」と声がかかる。電話をしているときが多いのだが、たいていぼくは仕事を途中にしたままで家族団欒の中へ入る。テレビではNHK大阪放送局のニュースをやっている。他愛ない話をしながら、ぼくはかきこむように夕飯を食べる。ぼくが食事をする時間はおそろしく速いのだ。およそ十五分、ぼくはまたデスクへもどっていく。

 ぼくがもどるころ、二人は帰り支度をはじめている。タバコの煙が臭いので、主任はドアをあけたままだ。ファンヒーターを目一杯かけて、彼らが帰ると見る見る間に部屋の中は暑くむせてくる。一人になったぼくはPCをネットにつなぐ。仕事を続けているときもあるが、こうやってみなさんと遊んでいるときもある。

 午後八時半を過ぎると「お風呂ですよ!」とお呼びがかかる。風呂は小四の息子といっしょに入ることに決まっている。朝が遅いぼくはいつも息子とすれちがいで、夕飯を黙々と、そそくさと食べてしまうから、スキンシップをはかれるのは裸の風呂だけなのだ。だが、そろそろ息子のほうがなま言うようになってきて、こうやって狭苦しい空間の中でコミュニケーションがとれるのも時間の問題となってきた。

 風呂から上がり、冷たいもの(ビールじゃない)を一杯飲んで、パジャマに着替えて、またデスクへともどる。仕事が片付いていれば、PCをオフにしてドアに鍵をかける。そして、今いる居間へとくつろぎに入っていく。高校時代からの机にはパイオニアのコンポともう一台のNECのデスクトップPCがある。これからの時間、眠るまではもうみなさんご存知のとおりだ。こうやって、ウィーク・デーの僕の一日が過ぎていく。