あさま山荘事件
 「あさま山荘事件」をビデオで見ていた。

 少年時代、テレビの実況中継にくぎづけになっていたことを思い出す。手に汗握りながら、赤軍派学生と機動隊との銃撃戦をつぶさに見ていた。あれは戦後の昭和史において、最も日本中が注目した事件だったと思う。

 が、映画では時代背景が描かれていなかった。いわゆる全共闘の時代、過激派学生が実際にどのようなものであったのか、映画の中では人質をとってたてこもった犯人像がただの若造にしか描かれていない。過激派学生は暴力団よりも恐ろしい複数の組織になっていて、殺戮のための殺戮に意義を感じているほどだった。また世相において、一般学生たちですら、警察権力というものに悪の象徴のような意識を抱いている時期だった。

 「あさま山荘事件」は警察内部のどたばたを描いただけの映画であり、原作における時代考察を抜きにしてのただの人質救出作戦だった。だから、時代を知る自分が馬鹿らしいほどなのだから、時代を知らない人たちが見ればさらにお粗末な映画だっただろうと、ぼくは思う。見るに値しない駄作だった。