水曜日のランチ
 ウィークデーのたいてい水曜日、かみさんが昼食を用意してくれないので、ランチタイムウォーキングの帰り、近所にあるホテルでランチを食べる。

 ホテルができてから五年ほどになるだろうか。僕がそこへよくいくようになったのは二年程前。あんまり美味しくはないが、空間が広いことと、たいして混んでいないのが僕にはちょうどよい。気分的にのんびりとできるからだ。たまに知った人と顔を合わすが、まず席を同じくすることはない。

 そのレストランには、顔なじみとなったチーフクラスのウエイターとウェイトレスがいて、そのどちらかが昼食の時間にいる。二人のどちらかは僕が席につくと、まず日替わりランチメニューを告げる。僕がそれでOKすると「ライスとミルクティーですね」と確認をする。僕がなにを言うことなく食事をしていると、よほど多忙でない限り、食事の終わりごろにミルクティーが運ばれてくる。僕の都合、ランチタイムが限られていることを心得ているからだ。

 食事より紅茶の味のほうが気に入っている。彼らは僕に「コフィー、オア、ティ」とは尋ねない。僕はご飯なしで何日でも暮らせる日本人だが、彼らは「パンまたはライス」とは尋ねない。

 呼吸の合う彼ら二人がいる限り、かみさんが昼飯を作ってくれない日は、あそこでランチを食べる。決して僕は彼らの名札すら記憶にないし、彼らも僕のことを知ってはいない。たった20分間だが、スープとサラダつきの880円ランチは、僕にとって実に快適なものとなっている。