皇女和宮の悲恋
 今年の紅葉は殊のほか美しかったので、楓と銀杏の葉を押し花にしてみた。なかなかに風情を感じていいものだ。やり方はとっても簡単なアイロンプレス。週刊誌の活字のページをアイロン台にして、テシュペーパーを広げ、この上に葉を並べて、またその上にテシュペーパーをかぶせる。そうして、力をこめてアイロンを当てる、と押し葉のでき上がり。

 昔、江戸時代までの女性は、いけ花の本の間に、イチョウやカエデの葉をはさんでいたという。当時の本は和紙でできていたからうっすらと見えたことだろう。

 「花のいのちは短くて・・・・・・・」 と歌ったのは「放浪期」で名を馳せた林芙美子。これはそれよりも80年あまり前の悲恋物語。静寛院宮こと皇女和宮がいつも胸に抱き続けていた人は有栖川宮であったが、その宮との婚約が不成立に終わり、いよいよ徳川家へ降嫁することが決まった。このとき、和宮が自分の胸のうちを伝えるために女官にことづけたのが、カエデの押し葉だったとか・・・・・・・。長文の恋文に代えて、たった一枚の木の葉、それは、燃えるような緋色ではなかったかと推測してしまう。いま手にしている深紅の楓の葉のようではなかったかと。