スポーツ紙デスクの嘆き
> 「西武は横浜より弱い」
> だからパリーグ消滅の危機だ、
> なんて夕刊フジが書いてたけど、
> 3戦までの戦いを見ていると、
> あながちでたらめでもないように思えてくる。
> 日本の代表的プロスポーツはどうなるんだろうね。

 上記は、きのうジャイアンツ二岡のグランドスラムを見てから、僕が友人に当てて送ったメール。下記は、意外にも、相当頭にきていたスポーツ紙デスクの本音。彼は虎キチ。まあ、誰だかわからないから公開してもいいだろう。まだ試合途中だが、今夜でジャイアンツの圧勝が決定的になった。K君、あんまり怒らないでくれよ。


 我田引水にプロ野球のルールを変えた巨人が、その恩恵で勝っているということ。逆指名制、FA制と、巨人が我を通して決めたルールを変えない限り、戦力の寡占化は続くだろう。

 ある時代までのプロ野球は、確かに巨人を頂点にしてはいたけど、それに敢えて牙をむく「個」の存在(村山、江夏、星野仙、山本浩二、平松ETC)がいて、均衡を保っていた。しかし、札びら戦争で選手が獲得できるようになって、富のあるところに集中。また「個」の側も、権力に立ち向かうよりも、そっちの側に属することを望むようになり、アンチ権力の気概を失った。

 思えば、これは田中角栄が導入した「日本列島改造論」により、我が国に充満した「カネこそすべて」の風潮が大きく影響しているのではないか。我々の世代まではまだ、それに対するなにがしかの批判精神を持っているように思うが、田中金権政治のまっただ中で少年時代、青年時代を過ごしたものには、まっとうな批判精神など望むべくもなくなった。

 司馬遼太郎がいうように「ひょっとしたら今の世の中は、太平洋戦争に負けた直後よりひどい」世の中なのかも知れない。生活は悲惨でも、いたわり、慎み、謙譲、といったものが日本人の中にはまだ存在していた。日本が豊か(物質的に)になるにつれて、そういうものがどんどん消えてゆき、自分さえよければいい、という考えが幅を利かす。

 君はパ・リーグ消滅の危機というが、この巨人の一方的な勝利は、近い将来の「良き日本人の消滅」を暗示するのかも知れない……。なんて、文明論風に書いてみたが、あながち的はずれでもないんじゃないか。

 山本夏彦というエッセイストが死んだ。おいらはこの人の愛読者で、そのエッセイはほとんど読んでいるが、たぶん、この人もこういう見方をしたのではなかろうか。

 まあどっちにしてもひどいことおびただしい。小泉は相変わらず能天気だし、民主も社民もどうしようもないし、日本は本当に今、危機に直面している。歴史ではこういうとき、必ず「傑物」が出現して、適切な舵取りをするのだけれど、今回は果たして…。それともまだ落ち込むのか。