賭けること
 これは一幕の三人芝居のタイトルだ。下北沢『劇』小劇場で何度か演じられている。大阪近鉄小劇場でも一度だけ上演された。その三人のうちの一人の俳優が同級生だ。

 その俳優の凱旋記念芝居を市民会館へ見に行っていた。共演はNHKの朝ドラ「さくら」でおなじみの河西健司と阿知波悟美のふたりだった。ユーモア溢れる絶妙な会話と、出口探しのストーリー。

 ここは宮本のマンション。横にいるのは逃走中の強盗。しかし凶悪な感じはしない、イイやつかもしれない。「遅くなるけど必ず帰るから」なんて電話で言ってる。時間だけが過ぎていく・・・・。宮本はふと気が付いた。これを企んだのは女房じゃないか、悪いのは女房のマスミだけじゃないのか・・・・。絶賛された「賭けること」、待望の再演。吉と出るか、凶と出るか、上手くいくのか、この三人。

 彼は終わりの挨拶で昔のことを覚えていた。「高校二年生のとき、この場所で芝居を演じたのが私の俳優へのはじまりでした」

 そう、よく言った。「義理の任侠花」 で僕は彼に斬られてやったのだ。市民会館はさながら同窓会の様相を呈していた。