Candle in the wind
久しぶりにカラオケに行ったときのことである。
スナックだと歌いそびれるが、
家族や仲間だけでのカラオケハウスだと遠慮がなくていい。

へたくそだが、好きな洋楽が歌えるのが楽しいのだ。
二番目に選んだ「Candle in the wind 」は、
かのマリリン・モンローを偲んで作られたバラードだった。
作詞、バーニー・トゥーピン、作曲エルトン・ジョンのいつものコンビだ。

私は歌詞を覚えていたから Goodbye Norma Jean で始まるものだと思っていた。
それは「風の中の火のように(孤独な歌手、ノーマ・ジーン)」のはずだった。

だが、歌詩が全然ちがっていた。
曲もアレンジされていて、画面の歌詞を読むことに精一杯になってしまった。

Goodbye Norma Jean は Goodbye England's rose になっていた。
孤独な歌手,ノーマ・ジーンは
孤独な英国の薔薇、ダイアナに変わっていたのだ。

リストを開いてよく見ると、
私が選んだ曲は Candle in the wind ではなく
Candle in the wind 1997だった。

非業の死を遂げたダイアナを偲んだエルトンが、
ロンドンのロイヤル・アルバートホールで開いたコンサートを思い出した。

マリリン・モンローを偲んで作ったバラードは、
四半世紀を経てダイアナ妃を偲んだ曲としてよみがえっていた。
もちろん新たに詩を書いたのは
いつものコンビのバーニー・トゥーピンである。

みんなが知っている「Candle in the wind 」は、
孤独な歌手ノーマ・ジーンではなくて、
1997年に自動車事故で亡くなったダイアナ妃のことだったのだ。

Goodbye England's rose
May you ever grow in our hearts
You were the grace that placed itself
Where lives were torn apart
You called out to our country
And you whispered to those in pain
Now you belong to heaven
And the stars spell out your name

この新しい詩を声に出しながらも、
私はかつての詩を歌っていたような気がする。

「さよなら、ノーマ・ジーン
僕はあなたの名しか知らないも同じ
でもあなたはいつも自分を抑え生きた素晴らしい人です
正直な言葉ひとつ聞けなかったそうだったのに

さよなら、ノーマ・ジーン
あなたの映るスクリーンを前にした22列目の若者は
今、世間に「モンロー」と騒がれるあなたより「ノーマ」
そう昔のあなたこそ魅惑的だと思っています」


そう、二人とも風の中のろうそくの火のように
はかなく死んでしまった。