涙雨
先ほどまで好天だったのに突如雨が降り出してきた。
今は亡くなった叔母のお骨拾いの時間だろう。
この雨を二人の娘と残された夫への涙雨と思いたい。

私はこの三年という間に、
肉親を二人亡くしている。
最初は弟で事故死だった。
病床にあった母はそれを知り、
生きる希望を失ってその四ヵ月後に果ててしまった。
いつまでも薄倖の人だった。

その翌年伯父が亡くなった。
将棋が大好きで、
県の将棋名人になったこともあり、
晩年は全七巻、3000ページになんなんとする
「将棋三国志」なる小説を自費出版した。
老人会のソフトボールに明け暮れる元気な人だったが、
急激な病には勝てなかった。

叔母は膠原病という難病と26年間戦いつづけていた。
死は彼女を病から解放し、
兄の待つ黄泉の国へと連れていってくれた。

世話をつづけていた次女のとめどない涙には心を打たれたが、
棺のなかでの叔母の表情は安らかだった。

そういえば、母も安らかな死顔だった。
長い闘病を余儀なくされてはいても、
お迎えが訪れたときにはほっとするのであろう。

雨がやんだ。
お骨は愛するものたちに拾われ、
四十九日が終わるまでは家族と共にいる。
自分だけに見える最後の現世の日々だ。

名残を惜しみながら、
黄泉の国へと旅立つ日まではあとしばらくだ。

叔母さん、どうか母によろしく。