ぼくも元気です!
 あるひとから「元気です。新作を書いている最中です」、と携帯にメールが来た。たったその一言でそのひとの意欲が窺える。うらやましいと思う。そろそろ自分も書かなくてはと切に感じてくる。

 体調を崩しておよそ一ヶ月、二ヶ月前の四月から書いていないのだから、疲れの予兆はあったのだろう。ビジネス(お金もうけ)さえなかったら、食べていく心配さえなかったなら、と思うこともある。でも、そんなことは理由にならない。

 かの深沢七郎はこうあった。日劇ミュージックホール(ストリップ)のギタリスト。借財を抱えた逃亡者。農場主。そして、最後に心臓の病で「好きなこと」がこれ以上拡がることがない現実にあって、「風流夢屋」という今川焼屋をやりつづけた。彼に家族というものがあったのかどうかは知らない。が、「楢山節考」「笛吹川」の二作は絶妙である。

 ぼくの怠惰は本業でないから許されている。むろん本業が、家計に響くような状況であるなら、かみさんに三行半を突きつけられるのが落ちだろう。そんなふうに言い訳をしているうちは、やっぱり本物を書くことはできないのであって、携帯の返信に「ぼくも元気です。続きを書いています」と、なかなか言えないのである。今さら自由奔放に生きられないし、生活パターンを変えることは至難の業だ。が、そろそろ復活といきたいと思ってもいる。