さらば松井、されどカブレラ
 久しぶりに野球中継を見ていた。日米オールスター第一戦である。試合中継が途中で打ち切られたので、勝敗の行方はまだ決定していない。が、大量リードしている日本チームが先勝しそうである。

 全国的に「松井、松井」と狂想曲が流れている昨今だが、僕は松井秀喜の決断を勇断だと思うし、彼のひととなりに敬意を表してもいる。アンチ巨人ではあるのだけれど。イチローよりずっと好きだといっていい。

 今日のゲームの見所は、まず上原浩二の力投にある。上原は大阪体育大学の卒業時、進路をアナハイム・エンジェルスか巨人かと迷ったほどだから、もともとメジャー志向が強かった。メジャーが誇る強打者バリー・ボンズを、三度、空振りの三振にうちとった熱投は、日米野球の歴史に名をとどめるほどのものだった。

 それから、昨年メジャーを追い出されるようにして日本にやってきて、今年、日本記録タイとなる55本のホームランを打った、アレックス・カブレラに視線が走る。レフトスタンドへ飛び込んでいった彼の打球には、燃えるような情熱がこもっていた。かつて、一度たりとも、日米野球で、外国人選手が日本チームの一員としてプレーしたことがあっただろうか。カブレラの熱い視線は、ひたすら再来年の捲土重来を期しているように思える。

 前監督、野村克也に干されていた今岡が先陣ののろしを打ち上げた。ケチックスの冷遇に対して、谷が反撃を開始した。西武の松井が「おれはリトル松井じゃない」と自分をアピールした。中村がメジャーにもひけをとらない打球の早さで、浪花の男っぷりを披露した。

 今日の試合は血沸き肉踊るというほどのものではなかったが、なかなかに楽しめるものだった。が、ここでちょいと注文、NHKでやってたなら、もっともっとよかっただろうということ。

 民放だからCMはしかたないが、野球のやの字も知らないタレントを、ゲストとしてなんで呼ぶのだろうか。客寄せパンダのように、よくタレントがスポーツ中継に顔を出すが、快く思っている通のファンはいないはずだ。普段の中継においても、アナウンサーの声だけでも、複数の解説者の解説(?)だけでもいい加減やかましいのに、と憤りさえ覚えてしまう。彼らがしゃべくりに登場したのは、上原の最高の熱投シーンだった。

 今年、巨人主催ゲームにおいて、NHKが5回中継をしたのだが、その視聴率は、日本テレビ系列のものをはるかに上回っていたという。やはりNHKは野球そのものを楽しませる配慮をとっていて、バラエティー番組にうつつをぬかす馬鹿な解説者を使ったりはしない。

 とまあ、NHKの肩を持ってしまったが、まあ、民放さん、ヤラセのドキュメンタリーなんか組まないで、せいぜい独自色を出して、いい番組を作ってくださいな。さて、まさか逆転されたんじゃないだろうな。ヤフースポーツで結果を見ようっと。