「秋桜(コスモス)」
 先週WOWOWで観た邦画である。小さな町の若者たちが先駆者となっていた。驚くような傑作ではないが,心のこもった映画だった。
 
 私が悔いることは,地域はちがうが,私も同じほどの規模のグループのメンバーに属していたからである。理事長も経験していた。私たちがしたことが「秋桜」ほどに多くの人々の心を打ったかといえば,決してそうではない。そして、私はすでに卒業をしてしまっている。いささかの考えがあろうとも,あのグループに戻って行動をおこすことはできない。

 後輩たちはなにをいまさらというだろうが,いまさらだこそ慙愧の念に耐えないのだ。日本映画で検索しても「秋桜」は出てこなかった。ビデオを巻き戻して,トップに掲載されていた「もとみや青年会議所」を検索してようやく見つけることができた。「秋桜」は、現代日本映画史上に記録されない小さな映画なのかもしれない。検索結果は以下のとおりである。いい映画だったから、観ることができれば観て欲しい。今週もWOWOWで再放送する。


 ◇青年会議所が企画、舞台は地元の高校住民らが全面協力

 福島県本宮町の青年会議所が企画し、地元住民が全面協力して作られた映画「秋桜(コスモス)」(すずきじゅんいち監督)が東京などで公開されている。エイズに感染した女子高校生が、偏見にさらされながらも家族や親友に支えられ、精いっぱい生きていく姿を描いた。地元あげての映画作りは新しい「地域発」の映画としても注目されている。【萩原佳孝】

 海外で事故に遭い、輸血でHIV(エイズウイルス)に感染した女子高校生が故郷に帰ってくる。小さな町で出合う無理解や偏見が丹念に描かれる一方、懸命に生きる主人公とそれを支える親友や家族の思いが、さわやかなタッチで表現されている。出演は小田茜さん、夏木マリさん、山岡久乃さんら。

 映画は、地元の「もとみや青年会議所」が創立10周年事業として企画。同町や地元の高校が実名で舞台となり、撮影もオールロケで行われた。エキストラ出演や、民家に分宿したスタッフへの炊き出しなど、青年会議所を中心に地元が全面的に協力。これまで100本以上の映画作りにかかわってきたすずき監督も「これほど地域の応援を受けたことはなかった」と話す。

 同町では35年前、母親たちのグループが映画を通じて生活指導を行う「本宮方式」と呼ばれる上映運動が行われた。それを紹介した毎日新聞の記事がきっかけとなり、母親たちが自分たちの手で映画「心の山脈(やまなみ)」(1965年公開、吉村公三郎監督)を作り上げたことがあり、当時大きな反響を呼んだ。

 青年会議所の中心メンバーは、この運動を通じて映画を観賞した経験を持つ人が多く、今回の映画はその「遺産」ともいえる。

 会員数60人程度の小さな青年会議所が、リスクの大きい映画製作に乗り出すことには、内部でも反対の声が強かったというが、中心になった同青年会議所前理事長の根本昌明さん(39)は「『いい映画を子供たちに残したい』というお母さんたちの精神が残っていたからこそ、今回の映画ができたと思う」と話す。当初は数百万円規模のビデオ作品になる予定だった。

 だが、依頼を受けたすずき監督が「フィルムの方が長く残るし、公開すれば多くの人に見てもらえる」と提案。最終的に35ミリの一般映画にまでなった。製作費も県、周辺町村からの補助に加え、日本テレビなど企業からの出資も得て、1億1000万円まで膨れ上がった。

 作品は「郷土愛と人間愛」をテーマにすること以外、製作者側に一任。撮影の過程で全町民の2割にあたる8000人がエキストラなどでかかわった。当時記念事業室長だった鈴木敏夫さんは「共通の話題が提供できたし、町の良さを映画の中で改めて気付かされた」と映画の意義を語る。

 すずき監督は「エイズという重いテーマを扱っているが、多くの人に生きることへの勇気と励ましを与えられる映画になったと思う。今回のような方式が、新しい映画作りの展望になれば」と期待する。

 東京、神奈川などで公開されているほか、各地で上映会も計画されている。