頭を冷やせよ
時代 高校二年生の秋
場所 教室
状況 英語の授業中

「パチッ」 誰かが指を鳴らす
続いてもう一人が鳴らす

教師の顔色が変わる
が、また朗読を続ける

また指の鳴る音が聞こえる
今度は連続している

教師が音の聞こえるほうを向いて
「誰だ」と怒鳴る

すると逆の方向から「パチッ」と指が鳴る
教師がそっちを向いて「おまえか」と別人を指差す

また、最初のやつが指を鳴らす
今度は両手でリズミカルだ

「いい加減にしろ」と教師が切れかかる
「みんな両手を上にあげろ」とさらに怒鳴る

誰も手をあげない
リズミカルな指のメロディーがそこかしこから聞こえてくる

教師は一人一人の手をとって歩く
誰がやったか確かめるように

だが、犯人は一人も見つけられない
女子生徒がくすくす笑っている

教壇にもどった教師は怒り心頭で
やった生徒が名乗り出なければ全員に欠点をつけると言いはじめる

「パチッ、パチッ、パチッ」 とまた指が鳴る
まるで教室中から聞こえてくるように

リズミカルな指のメロディーが流れている
真っ赤な顔をしている英語の教師に向かって

誰かが終わりの言葉を囁く
「Just keep it cool boy !」