雪景色の朝
昨日の束の間の銀世界は,今朝の雪景色の前兆だった。
家の周辺では午前十時ごろ,粉雪がちらついただけだったようではあるが。

おそらく昨日のゴルフ場はかなりの雪が積もっていて,
きっとクローズしていることだろう。
でも,天候は今日のほうがずっといい。
風もないし暖かい。

クローズは僕の期待である。
今日は新年杯の日で,
僕はディフェンディングチャンピオンだったのだ。
同窓会があって出場することが叶わない。

通年なら昨日は家族と過ごす日であり,
今朝起きたときに腰痛がぶり返すことはなかったはずなのだ。
摂氏二度ほどの気温での六時間のプレイは長すぎた。

それにしても太陽に輝く白銀の光景はなんと美しいものだろう。
窓から差し込んでくる暖かな陽射しの中にいると,
何かしら充足した気分に満たされる。
南東からの太陽がパソコンに向かう僕の大腿部にまで届いて心地いい。
ティーカップから立ちのぼる湯気が,穏やかなときの流れを感じさせる。
ふと見ると,刈り込んでいたはずのバラの木から
弱々しいピンク色の蕾が一つ花を咲かそうとしている。

物音一つ聞こえない静かな午前だ。
何もせずにいると,光の中を埃が舞うのを見ることでさえ,
幸福な時間のように思えてくる。

コンポをオンにして,
ケイコ・リーの「ローマからの手紙」を聴く。
こんな優雅な時間が一年のうちでどれだけあるだろう。

そろそろ子供たちが起きだしてくる頃だ。
明日は仕事だ。
そう思ったとき電話が鳴った。

「おい,スタートできるぞ。まだ新年杯には間に合う。すぐに出てこい」

「悪いが今日は四時から同窓会なんだ。去年から言ってるだろう」

「そんなの遅れて行きゃあいいじゃないか。頼むよ」

握りができるメンバーが足りなくなったに決まっている。
僕は今年も懲りない面々と付き合わなくてはならないようだ。

「行かない!」

今日だけは断固としてそう言った。