スポーツ考 野球とゴルフから
概して国民的な考えでは、
野球は大衆的、ゴルフはブルジョア趣味的であろうと推察される。

競技人口自体はずっとゴルフのほうが多いのに、
娯楽として見る観客の数は比較するまでもなく野球のほうがはるかに多い。

アマチュアの側から野球とゴルフを考えてみよう。

野球は一つのグラウンドがあり、一つのボールがありさえすれば、
二チームの十八人以上がプレイできる。
本格的にやるのなら、ユニフォームや何やかやでかなりのコストがかかるが、
一旦そろえてしまえばたいして費用はかからない。
草野球ならなおさらのこと、グラブとバット、ボールがありさえすれば楽しめる。

かたやゴルフというと道具を揃えるくらいはたいしたことはないが、
いちいちゴルフ場にエントリーが必要であり、
そのプレー代はコースと曜日によって異なるが、
ウィークデーで1〜3万円、土日だと1.5〜4.5万円ほどかかってしまう。
ゴルフは個人競技だとはいうけれど、
3〜4人で一組だから、一人でプレーすることもままならない。

ここまで話していると、どうもゴルフは野球に比べて分が悪い。
これじゃ子供たちや若い人たちへの門戸は閉ざされているといって過言ではない。

しかし、海外を見てみよう。
欧米やオセアニアでは、パブリックのコースがいくつもあり、
メンバースコース以外ではたいてい三千円前後でプレーできる。
欧米ではサマータイムがあり、
ウィークデーにビジネスマンが仕事を終えてから
日が暮れるまでプレーする姿は珍しくもない。
イギリスやカナダでは日が暮れるのは夏至のころなら午後十時過ぎなのだ。
また、少年少女たちには特別料金が設定されており、
映画を見るほどの料金でプレーさせてもらえる。

キャディーなんて贅沢なものはない。
自分でバッグを担いで歩いて、自然とともにプレーするのである。
スコアは自主申告だ。かといってインチキは許されない。
マナーもルールも自分自身が人から学び、理解し、会得して、
フェア-なスポーツマンとなるのである。
ひとたびフェア-でない烙印を押されたものは、
人格を疑われ、仲間ハズレになるだけである。

日本ではそんなゴルフをするのに、
1200円のゴルフ場利用税などという不条理な税金を一人一人から取っている。
加えてさらに消費税である。
こんな税金がある国は世界中に類を見ない。
地方自治体は無駄を省き、こんなふざけた税金を撤廃すべきである。

話がちょっとずれてきたようである。
むろん観客が見て熱狂するのは野球にはちがいない。
しかし、年齢を経てからも若いスポーツマンと技術で争い、
ともに楽しめるスポーツは、ゴルフ以外には少ないと思う。
そのことには男女の差ということもない。
初老のカップルが楽しんでいる姿も美しいではないか。

還暦を過ぎた男が、二十代の選手に勝てる可能性がある。
する側と見る側という関係ではなく、
体が動く限りいつまでも年齢性別に関係なく、楽しみ競えるものとして
ゴルフはすばらしいスポーツだと僕は思う。


次は野球とゴルフのプロについて。

野球は団体競技である。
アマチュアのとき素質に恵まれた選手が、
たくさんの契約金をもらい、各チームに入団する。
年俸は成績次第だが、解雇されぬうちは常に保証されている。
移動や宿泊、キャンプなど野球に関する費用のすべては球団持ちで、
たいていは高級ホテル、グリーン車などがあてがわれる。

プロゴルファーはなりたくてもなれない。
たとえ学生チャンピオンでもプロテストに合格しないとならないし、
賞金がもらえる試合に出るためには、
幾度となく行なわれる予選試合なる狭き門を通過しないとならない。
自由に全試合に出場できるシード選手(ツアープロ)は、
全国に二万人以上いるといわれるプロのなかからたった七十人ほどだけなのだ。

プロゴルファーは所属するチームを持たない。
契約金も年俸もない。
彼らは賞金稼ぎなのだから。
日曜日に試合を終え、月曜日は移動日、
火曜日がトーナメントのあるコースでの練習日、
水曜日はセレモニーみたいなプロアマ戦、
そして、大会初日と二日目の木金が、予選トーナメント、
三日目と最終日の土日が決勝トーナメントだ。

彼らのほとんどはすべてが自費だ。
飛行機代も滞在費用も挙句にゴルフのプレー代も支払うことになっている。
むろんキャディーさんへの謝礼もだ。
一つのトーナメントに出場すると、
それぞれの待遇によってはちがうが、
およそ二十万円が必要となる。
予選落ちすれば全部赤字、
なんとか予選を通って下位のほうで終了すれば、収支トントンといった具合だ。

プロゴルファーに決まった年俸もなければ、
FAなんぞという豪勢な制度もない。
その年の稼ぎが悪ければ次の年憂き目を見るだけのことで、
なんらリストラ対象のサラリーマンと大差ない。

僕は厳しい生活を何年も続けているプロを知っている。
彼だって、何度かシード選手にもなり、ツアー競技で優勝だってしたんだ。
その彼がこの年の瀬、所属コースから解雇された。
所属コースと言ったって、
少し手伝いをして、キャディーさんほどの給与をもらっていただけなのだ。
所属コースがないと練習もままならない。

日本での野球とゴルフ、
プロだけで見れば野球のほうがずっとずっとブルジョア的で、
ゴルフ界は一部の選手を除けば世知辛いほどにプチブルだ。

タイガー・ウッズ、マイケル・ジョーダン、アレックス・ロドリゲス・・・・・etc、
彼らはまちがいなくスーパースターにちがいない。まるで打ち出の小槌のような。

USAはあまりにあまりにビジネスに貪欲であり、
世界を席巻するが如くふるまっている。
MRブッシュの発言などは傍若無人とさえ思えるときがある。

なぜかしらアメリカンドリームスは地球を顧みない現象となってしまった、
と思うのは僕だけなのだろうか?