喪中はがき�U
相変わらず喪中はがきが毎日のように届く。

今日届いたのは,私が前社の役職に在任中に
直属の部下だった人の奥さんからのものだった。
十月に亡くなられたと記載されていた。

私が職を辞してよりおよそ六年半,
あのとき彼は定年間近だった。

三年前母が死んだときには御香料を頂戴していた。
体はもともと弱い人だったが,
のんびりと老後を楽しんでおられるものと思っていた。
年賀状のやりとりは欠かさず続いていたのだ。

私ははがきを受けとるなり電話をした。
電話の声ですぐに奥さんだということがわかった。
いつも控えめでやさしそうな方だった。

享年六十六歳,肝臓病による死だった。
二年程前から入退院を繰り返していたそうで,
入院先の病院で亡くなられていた。

病ではあまり苦しむこともなく,安らかに永眠されたという。

「いろいろとお世話になりましてねぇ,よく気を使っていただいて・・・・・,
あのころ主人はそう言って喜んでおりました。
今お電話があったことを仏前に報告してやります。きっと主人が喜びます」 
と奥さんのすすり泣く声が聞こえてくると,
私の目に涙があふれてきた。

私は彼の入院のことを知らなかった。
いや、彼の葬儀すら知らずにいたのだ。

私はもらい泣きしてしまって,
はっきりとお悔やみの言葉を告げることができずに電話をおいた。

在職中から病気がちな人だった。
ずいぶんと年下の私が彼になにをしてあげられたのだろう?
厳しいことばかり言って困らせていたのではなかったか?

幾度となく反芻する気持ちは尽きない。
お供えを持って御参りに行かなければ・・・・・・・。