富める者と貧しき者
人々に貧困がもたらす苦痛が存在しなかったならば、
宗教というものは起こりえなかったのだろうか?

それぞれの祈りは、それぞれの心に抱く神に対してであり、
それは宗教と無縁ではなかったろうかとも思われるときがある。


作シーズン、アメリカメジャーリーグでフリーエージェントとなり、
マリナーズからレンジャースへ移籍したアレックス・ロドリゲス選手の契約内容は、
10年契約で300億円を超えるというものだった。
今年、ホームラン新記録を樹立したバリー・ボンズ選手もフリーエージェントとなり、
5年契約の150億円でニューヨーク・メッツへ移籍すると報道されている。

二人の年収は、共におよそ30億円、
日本の一流企業のサラリーマンの300人分ほどの収入だ。
それが中国なら3000人分ほどになると思われる。

30億円という金額は、草木も生えないアフガニスタンではいかほどのものとなるのだろう。
想像するに食べて暮らしていくことだけなら、
少なく見積もっても3万人は生きていけそうな気がする。

ゴルフ界のスーパースター、タイガー・ウッズにおいては、
40歳まで現状の実力と人気を維持できれば、
累計して日本円で1兆円を手にするといわれている。

この世は、すべてにおいて不条理なものだと僕は思っている。
でも、最近はその不条理さの度合いが常軌を逸しているのではないかと思ってしまう。
何かが狂ってやしないかと。

マイクロソフト社のビル・ゲイツ氏は、その成功において巨大な富を得ることができた。
彼の成功は20世紀末の世界の経済の発展にも貢献した。
マイクロソフト社は数十万人規模の雇用を継続し、
またそれに関わるところで多くの人が生活の糧を得ている。
だから、ビル・ゲイツ氏にけちをつける気はさらさらない。

だが、たった一人の野球やサッカーやバスケットなどのスポーツ選手、
俳優やタレントの収入の額を知るたびに思うのだ。
彼ら一人一人の収入の半分で、
地球上のどれほどの人々の飢餓が救えるのだろうかと。
たった一人と三万人、世界はなんと不条理なのだろう。

地球の片隅から、誰かがどこかで狂気の雄叫びをあげている


PS どうか誤解しないで欲しい。一部のスポーツ選手個人を槍玉に挙げたわけではない。一例として出しただけなのだ。高度成長期に国民的英雄だった、ミスタージャイアンツ長嶋茂雄や王貞治ですら、一般の庶民と比べて松井秀喜ほどに富める選手じゃなかった。ましてやイチローなどの比ではなかった。デフレスパイラルの中で、さらに貧富の差が拡大していく。いわんや国家間の貧富の差は拡がるばかりだ。