往年の名作
先月東京の友人の家に行ったとき、
彼の居間に「東京物語」のポスターが貼られていた。
友人の映画好きは、たいていがオールドファッションなのだ。

それは昭和二十八年の松竹映画で、
監督は小津安二郎、往年の名作と呼ばれている。
ポスターには笠智衆と原節子が写っていて、
日本映画の歴史というものを感じさせていた。

ある映画雑誌を読んだとき、「東京物語」は、
世界映画のランキングにも入るほどの名作だと書いてあった。
また、笠智衆と原節子の二人は、日本映画史上の名優だ。
僕は一度もその映画を見たことがなかった。

だから、おととい妻がレンタルしていたビデオを返しに行くとき、
ついでに「東京物語」を借りてきてくれるように頼んだ。

昨夜、当時の絶世の美女と呼ばれた
若き日の原節子を見るのが楽しみだった。

ところが、出てきたのは中山美穂だった。
「妻のやつ、リメイク版を借りてきたな」
と憤慨しながら見ていたが、どうも時代背景がちがっていた。
お気に入りの中山美穂には文句は言えなかったが、
竹中直人がどうも怪しいやつだった。

それでデッキからビデオを取り出してみた。

ああ、なんと、これは物語ではなく、東京日和だった