春の一日
少し風が冷たかったが、いい日和だった。
息子といっしょに川へ出かけた。
途中でローソンに寄り、クオカードで「かっぱえびせん」を買って。
もちろん、鴨たちと戯れるためにだ。

鴨たちはいつもの対岸にいた。
かっぱえびせんが届かない場所にいた。
だから、ぼくたちは来た道を戻り、
橋を渡って対岸へ行こうとした。
そのときだった。
鴨たちが一斉に飛び立った。
一周だけ円を描いてから北の国へと飛んでいった。
11月までのお別れだった。
帰り道、ぼくたち親子はかっぱえびせんでおなかがいっぱいになった。

帰ってきてから、久しぶりに花壇や木々を見てまわった。
パンジーやデージーの満開が近づいていた。
チューリップや水仙の伸びもいい具合だ。
木蓮の蕾がふくらんでいた。
息子が金柑の実をとりにいった。
うん?、金柑の木の上のほうに大きな橙色の実が成っているではないか。
五つ六つある。
金柑の木の枝には棘がある。
息子を肩車して手を伸ばさせた。

「おとうさん、これ伊予柑みたいだよ」
「あほなことを、金柑の木に伊予柑がなるか?」
とはいったところで息子のいうとおりだ。
下のほうにはまちがいない小さな金柑が成っている。
二つに割ってみて味見してみた。
すっぱくはないが、うまくもない。
ただ、多少甘い。
摩訶不思議だ。
二人の偽りでない証拠に四個を枝に残しておこう。

12月からずっと枇杷の花が咲いている。
ヒヨドリがピイピイ鳴いている。
カラスがアホウアホウと笑っている。
ああ、この二週間、おまえはなにをしていたのだと
太陽と青い空と吹きくる風がぼくにいう。