美人であること
 「わたし、知ってる。わたしを花嫁にしてくれる人なんていないわ。わたしは変わり者だもの。変なことばかり言うんですって。ジョシーみたいに美人でもない。顔だって馬面ですって。料理人がそう言っているのを聞いたわ」

 「先日、デザートのラズベリー・トライフルをいただいていたら、青豆が三個も入っていました。ベルガードの料理人はどうやら目が悪いようです」

 「ねえ、ミスター・ケストレル、わたしは大きくなったら少しは美人になれるかしら?」

 「美人であるのはそんなに大切なことではありません。輝く目と白い歯を持つお嬢さんなら、みんな美人です。それに賢くて、元気がよくて、勇気があればもっといいですね。それらはやさしい気持ちとウイットに富む女性には必要なものです。美人とは、ミス・フィりパ、いいですか、絶世の美人へレンのように美しくても、ただのおもしろくもない女性は美人でもなんでもありません。魔女でも、キルケーのように魅力ある女性を本当は美人というのです」

 「わたし、キルケーのようになれるかしら?」

 「ええ、絶対に」 ジュリアンは軽く眉を上げて見せた。

 「Cut to the quick」  / by Kate Ross