バトル・ロワイアル
中高年だけではなく、
20〜30代の世代にまで過労死が発生している。

週休二日、年労働2000時間などという
厚生労働省の労働条件の推進が陳腐にすら感じられる昨今だ。

先ほどNHKテレビでは
23歳の女性が、くも膜下出血で突然死した状況を放送していた。
それは次ぎのとおりである。

デザイナーになりたいという十代のころからの夢があった。
学校を卒業し、希望通りの広告代理店に就職が決まった。
彼女は自分が選んだ道だからと一生懸命仕事をしていた。
だが、次第に日々残業が深夜まで及ぶようになり、
家族のものがその疲労を見て、何度も心配を口に出したという。
でも、目標があるのだからと振り切られるとそれ以上は言えなかった。
そして、それは悔やんでも悔やみきれない死となった。
お母さんは会社を相手取って過労死訴訟を起こし、
会社側は過労死を認め和解が成立した。
以後そのお母さんは若者の過労死を防ぐ活動を続けている。

私の仕事先で
某大手教育機関でアルバイトをしている女性がいる。
彼女は大阪の公立大学を卒業し、
最大手の人材派遣会社に就職をした。
勤務は東京本社になった。
研修が終わり、本格的な勤務に入りだすと、
残業はあたりまえ、しばしばそれは深夜にまで及んだという。
といって、残業手当は基準時間分だけ、
ほとんどはサービス残業だったという。
むろん深夜残業の5割増賃金など払われてはいない。
だから、約一年で彼女は辞職し、郷里に帰ってきている。

人材派遣会社と訊いただけで私はどこだかぴんと来た。
彼女のほうから最大手だと私に言ってはいない。
大阪の公立大学を出て入る先となるとあそこしか考えられなかったからだ。

十六年程前、私はその会社の社長の講演を聞いている。
起業は彼の大学二年生のときに遡る。
弱冠二十歳にしてそのビジネスの礎を築いている。
それからの十五年間の彼のベンチャービジネスの経緯を記した
彼の書「青年帝王学」を私は持っている。
あの講演のときの彼の署名入りのものである。
来月にはそろそろ廃品回収に出そうと思っている。

彼はニューヨークに住んでいて、
日本とアメリカを行ったり来たりしている。
自分の子供はアメリカの学校へやっていて、
インタビューを受けて、
日本の教育の貧しさを新聞紙上で指摘したこともある。
言われてみればそのとおりで、
彼の言う日本の教育は「独創性に欠けている。子供の個性を尊重していない」

しかし、そういう彼の会社もまた、日本流のずるいやり方で
一般社員に会社に奉仕することを強いている。
もし、自分の会社に過労死でも起ころうものなら、
自分は知らなかったで押し通そうとするのだろう。
なぜなら「青年帝王学」を学ぼうとするなら、
自らの自主性で目の前にあることを取り仕切っていかねばならない。

昨晩「バトル・ロワイアル」という邦画を見た。
細部に渡ってはいろいろな見方があるのだろうが、
私にとって実に不快な映画だった。

修学旅行の帰り、バスを何者かに乗っ取られ、
無人島に連れて行かれた中学三年生が
最後の一人になるまで殺し合いを強いられるという馬鹿な話だ。

全員が爆弾付の首輪をはめられ、
元担任で狂人キタノの指示どおりに動かなければ
首が吹っ飛ぶという設定だ。
三日間、たったひとりの生き残りをかけて
中学三年生のクラスメイトが
残酷極まりない殺し合いをする。

戦車に乗り、ヘリを飛ばし
武器を持って少年たちを威嚇監視する
キタノの指示に従う
多勢の軍隊もしくは自衛隊の連中がおどろおどろしい。
が、また滑稽でもある。

残虐シーンが多いのでR15指定になってはいるが、
こんなものはないに等しい。
指定の対象たる中学生が殺し合いをするのだから、
この映画が単なる娯楽として作られたのだとしたなら、
私は映画会社の東映に対して憤怒の念を禁じえない。

この映画の意図するものは何なのかを考えてみたとき、
私には不毛ということしか浮かばなかった。
そして、寝つきが悪くなった。

私にとってタレントのワーストは
やっぱりビート・たけしだということは言うまでもなくなった。

あの映画の意図する大切なことがあるのなら、
どなたか教えて欲しい。

私には日本中がバトル・ロワイアルだと思えてきた。