伝家の宝刀
ごへ君が賭けをしようかなどと言ってはいたが,
まさかあの宝刀が抜かれるとは思いもかけなかった。

ダイエーの存続は年末年始を挟んで,
政府高官による大手銀行への支援要請によって,
倒産の危機は回避できることとなった。

大きすぎるから潰せない,
そんな屁理屈のようなことがまかり通り,
ダイエーだけが至れり尽くせりの救済劇となった。

大手四行からの金融支援は,
4200億円になんなんとする。
金融機関からは厳しい再建計画が求められているが,
潰されてしまったマイカルのことを思えば,
なんという幸運であろうか。

株価は本日急騰し,二週間前の二倍以上に跳ね上がった。
証券マンたちにも全くの予期せぬシナリオとなってしまった。
実質的な判断で損切りをしてしまった投資家にはさぞ無念なことだろう。

かつて,金融不安が日本列島を震撼させたとき,
外資の圧力に屈した日本政府は山一證券を生贄のようにして倒産させた。
山一證券の株式自体は全くの紙切れになってしまったが,
顧客の預かり資産や額面割れしていた社債などは全額返済され,
倒産のおかげで利益が出たところもあったのだ。

債券を全額返還できる企業が倒産するはずがない。
山一倒産の後,すぐにメリルリンチがやってきて後を引き継いだ。
その悪徳メリルが日本ではうまくいかないと、
大幅な店舗削減と人員削減を発表した。
これはビジネスミスで,ざまあ見ろと言いたいが,
やっぱり旧山一の社員がリストラの悲劇にさらされる。

当面ダイエーは安泰である。
よけいなことをせず,本業一筋にやっていれば,
早晩業績は回復してくるだろう。
これだけ至れり尽せりなのだから。

どうしてダイエーだけが・・・・・,そう思われる方がいるはずである。
むろん倒産が回避できて,
関係者には喜ぶ人がありこそすれ,喜ばない人はいないはずである。
しかし,どうも腑に落ちないことも事実である。

伝家の宝刀の意味を語ることはタブーである。
しかし,まちがいなくそれは抜かれたのである。

日本国憲法第十四条 「すべての国民は法の下に平等であつて、人種,信条,性別,社会的身分又は門地により,政治的,経済的又は社会的関係において,差別されない」